夏五版ワンドロワンライ第69回お題「終わりの日」 全ての始まりの日は、いつだろうか。
この世界に生まれ落ちた日か。初めて家の隅に漂う呪いを視認した日か。
それとも――満開の桜の下で、君と初めて出会った瞬間だろうか。
「素晴らしい、素晴らしいよ」
一歩、また一歩。壁にほとんど凭れるように、ゆっくりと、しかし確実に前へ進んでいく。
「正に世界を変える力だ」
片方の腕が吹き飛ばされたせいで、うまくバランスが取れない。しかし麻痺しかけてはいるが痛覚によって、今にも飛びそうになる意識を、まだ辛うじて留めることができていた。
ここで立ち止まって倒れ込んで、目を閉じてしまえば、すぐに楽になれるとわかっていた。
それでも、夏油自身がそれをよしとはしない。
まだ、なにも成し遂げてはいない。
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