かわいそうな話わしの嘘を罵るものなど、居なかった。
物心つく頃には父親がいなかった。
母は病気で死んだと言っていたが、墓も無かったし近所の噂話で母が父に捨てられたのだと聞いた。
父が居ないので、我が家は母と、小さな妹と、儂の3人で、とても貧しかった。
貧しいのは嫌だった。でも
「母さん、貧しくても平気だよ。働くのは好きだ。」
嘘をついた。
痩せた庭先で野菜を作り、貧相な干からびたような野菜を売っていた。
売れるわけがない。
毎日、売れなかった野菜を捨てて帰った。
売れたことにしなければならない。
財布を盗み、そこから野菜の分の金額だけ毎日抜き取って持ち帰っていた。
「売れた」
と嘘をついた。
それでも、夏は野菜がよく育つ。
「きゅうりはマシかの…」
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