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    ゆる。

    推しCPに人生を捧げたカプ厨。
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    ゆる。

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    【水魚之交】と【比翼連理】と【探しモノ】の続きのお話。
    …ここに書く題名が増えてきた。

    #花寧々
    hanaNing々

    小さな願いごと『初恋は実らない』
    そんな話を聞いたのはいつだったか。確かなのはこの学園の生徒が話していた、ということだけ。
    なんで、そんな話を思い出したかといえば柚木普の人生の中でたったひとりの、最愛の少女が言った一言まで遡る。

    「そういえば、花子くんの初恋って誰だったの?」
    顔にまで知りたいと書いてあったから、困ったのは内緒の話。でも、本当に困ったな…。だって、それは…君だって言わなきゃならないのだから。
    この時ばかりは表情を作れることに感謝した。無理やり口角を上げて、からかうように、いつもの"花子くん"を演じるように。
    「いつだったのかなぁ…?俺も覚えてないや。そもそもいないのかもしれないしぃ?」
    「そっか…」
    そんなあからさまに落ち込まないでよ。ほら、笑って
    「俺はもういいでしょ。んじゃ、ヤシロの初恋って誰だったの?」
    嘘だ。本当は知りたくなんてない。生者である君が、夢見がちなヤシロが好きになるのは、俺じゃないだろうから。
    「私?…はなこくん、かなぁ…?」
    ルビーのような双眼を潤まして、耳まで真っ赤に染め上げた君につられて体温なんてとうに捨て去ったはずの体に熱が灯る。信じ…られない。その意を込めて問う。
    「…源先輩、とかは?」
    「花子くんが教えてくれたじゃない。私は今まではきっと誰でも、よかったの。…でもね、今は花子くんが私をみてくれないと…ちょっとだけ嫌だなって…」
    嬉しくないはずがない。今までの想いも、今なら伝えても許されるかな?カミサマが許そうが許さまいが関係ない。たとえ俺が消えてしまったとしてもヤシロが今だけでも想ってくれるから、なんだってしてやる。
    「ね、ヤシロ」
    「なぁに?」
    「あのね、さっき覚えてないって言ったのは嘘だったんだ。ちょっと長いけど、俺の話、聞いてくれる?」
    ヤシロの心情の中ではさっきまでの俺と近いのか、彼女の綺麗な瞳が感情に揺さぶられる。いいよ。いくらでも待ってあげる。
    ようやく聞く勇気が出たのかヤシロは小さくうん、と溢した。
    「ん。俺がいつだったかの小さい頃に七夕の星祭りに行ったんだ。ほら、ヤシロもアオイちゃんとかと行ったことあるデショ?それだよ。俺の初恋の人はね、高校生くらいの女の人で、足首が腫れてたのかな?ってくらい特徴的でよく覚えてる。あぁ、それだけじゃないよ?そのおねーさん、俺が持ってた短冊を欲しいって迫ってきたのに、最後にはおねーさんが持ってた短冊を全部渡してきたんだ。不思議でしょ?しかもね、そのおねーさん…当時の俺の夢を応援してくれたんだ。他の大人たちは止めとけって言ってたのにそのおねーさんだけ。ね、ヤシロ。わかった?ヤシロが、ねねおねーさんが俺の初恋の人なんだよ?」
    話してるうちにどんどん紅くなっていく君がおかしくて、可愛くて、止められなかったのはごめんね。でも、そんなところも全部好きだから。
    未だに紅くなったまま、固まっている君を優しく抱きしめれば高くなりすぎた体温と冷たい霊体が混ざり合ってぬるくなる。
    これくらいは"花子くん"の名を冠してから、もう一度君と出会えた奇跡に比べるとどうってことないかな。カミサマの温情か、消さないでくれたらしいことをかみしめる。自身の中で歓喜しているとヤシロはふわりと笑ったかと思えば言い聞かせるように呟く。
    「うれしい…」
    どんなに君を愛しても構わないのなら、怪異になって良かったって言えるかもしれない。
    まだ、生者の特権を羨む俺としては大きな一歩。
    俺の世界は君がいたから、始まったみたいなものなんだ。そう言えればよかったけど、俺にはそんな勇気はなくて。
    「好きだよ、ヤシロ」
    少しでも君に届けばいいな、そうあの日願った願い事を君に返す。
    今は返ってこなくていいから。聞いてさえくれれば俺は救われるから。

    小さな怪異の少年の願いは大きすぎる少女の気持ちに遮られて聞きとどけられない。
    「私も、花子くんがすき!」
    窓辺から差す、斜陽のせいか、彼らの気持ちのせいか、ふたりの顔は紅く染まっていた。
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