カミサマへの挑戦状『七番サマ。掟を破れば、罰点。この話を忘れたわけじゃないですよね?』
と土籠は最近そればっかり言ってくる。
しかも加えて
『…そんなんじゃァ、あいつは喜ばねェよ』
なんて言ってくるから。
『…うるさい、土籠』
七番様という権力に縋って一蹴した。
*
ヤシロの寿命が短いなんてこと、最初から知ってたはずだったのにな、なんてこぼれた言葉は誰にも掬われずに落ちていくだけ。
ヤシロの"お願い"をふたつ叶えたときも、一番の未来を司る時計守が逃げ出したときも、四番の境界でのエソラゴトも。
それら全てに罰点が下されてきた。左腕は旧制服で隠れているものの、痛みは誤魔化しきれない。罰点は今よりも規則とかが厳しかったときよりも随分増えた。
――たぶん、きっと。俺はもうすぐ消えちゃうんだろう。
いいよ、別に。なんて諦観してた頃の自分は言うけれど、それよりも小さな初恋泥棒に会った頃くらいの自分は、ほんとに諦めちゃってもいいの?と不安気に聞いてくるから。決意が揺らぎそうで怖くなる。だからこそ、だ。
泣きそうになる自分を必死に押さえつけて、挑戦状を見せびらかす。
「ヒトゴロシの存在ひとつなんかで"好きな子"を救えるのなら、本望だよ。」
なんてカミサマに貼り付けた笑みを見せながら。
*****
花子くんがいなくなった。
私の寿命が延びたから見えなくなったとかじゃなくて、この世界から存在ごと、消えてしまった…みたいな。
土籠先生は花子くんを探し回る私と光くんを見かねて、努めていつも通りに教えてくれた。
『七番サマからお前に伝言を預かっている。』
それを聞いた私は何も言えなかった。
今となれば申し訳ないこと、したかなって思うけれど。
*
「ねぇ、光くん。ほんとについてきてもらっても大丈夫なの…?源先輩はいいって言ったの?」
ついここまでついてくることになってしまった光くんに聞きたくなってしまった。
「兄ちゃんには言ってないっスけど…。でも、オレ、花子に言わなきゃならないことがあるんです。…だから、先輩は心配しないでください!」
多分、本当はここで光くんをお家に返さなきゃいけないんだろうけど。
「…ごめんね。それじゃ、行こっか!」
せめて、言わなきゃいけないと思った言葉を小さく口にして、いつもの八尋寧々に戻らなきゃ!花子くんが好きでいてくれた私で花子くんを迎えに行かなきゃ!
私は待ってるだけのヒロインじゃないのよ!
それから、光くんとふたりで"赤い家"のあった場所で見つけた井戸へ飛び込んだ。
――待っててね、花子くん。もう二度と、私だけで幸せになって、なんか言わせないんだから!