かわせみ返歌「八左ヱ門、これをやる」
「……なんだ、これ?」
ずい、と無造作に差し出されたものは手触りの良い手拭いで巻かれた小包であった。薄紅で絞り染めされたそれは三郎の手にぶら下げられ、所在なさげに揺られている。
呼び止められた廊下のど真ん中、はてどうすべきかと逡巡していれば、再び押し付けるように差し出されて包みが揺れた。
「早く受け取れ。私の気は長くないぞ」
「あ、ああ……で、これ一体なんなんだよ?」
「いいから。好きにしろ」
最終的に胸元にぐりぐりと押し付けられたそれを慌てて受け取れば、それで満足したのか三郎はサッと踵を返してしまった。
後に残されたのは淡い包みと、困惑する俺一人だった。
好きにしろと言われても一体この包みの中身が何で、なぜ俺に渡されたのか皆目検討もつかない。
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