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    manju_maa

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    https://poipiku.com/1184617/11317902.htmlの続き。ブロマンスになる予定です。

    問題は適当orネットとGoogle翻訳参照です。

    新任教師明智先生と前歴持ちの雨宮くんの話②二年D組、雨宮蓮。
    何かあると声を揃えて賑やかに声を上げるこのクラスの中でただ一人、静かに孤立している。在籍中の生徒が傷害事件を起こすなど退学処分が妥当な判断だが、どうやら首の皮一枚でそれは免れたようだ。まあそれが孤立の最大の原因になっているが、学校側はあえてそれを見て見ぬふりをしている。退学させないだけ感謝しろというように。
    雨宮の前歴の噂は何故かクラスだけでなく校内全域に知れ渡っていた。ただ付いた尾ひれが広がりすぎてただの傷害事件であるはずが、ナイフで人を刺しただの麻薬取引してるだの、随分と好き放題言われている。
    一年の頃の成績は並。素行も普通。可もなく不可もなく、どこにでも居る平凡な男子高校生。そのはずだった。
    元々口数が多くない性格のようで、友達の輪の中に居るというよりは特定の気が合う友と囁かに友好を深めるタイプだったらしい。最もその唯一の友人も前歴の件とクラスが変わって離れたことも相まって、疎遠になっているようだ。それもあって、今ではその寡黙さが何をしでかすか分からない歩く地雷として扱われている。

    「この英文を誰かに和訳してもらおうかな」

    新学期が始まって一ヶ月。
    広がり続ける噂の渦中にいる雨宮は、全ての生徒から煙たがれながらも顔には出さず保護観察期間を淡々と過ごしている。遅刻はなし、授業のボイコットもなし。ただこちらの話をまともに聞く気はないようで、授業中もHRの時間も基本的にその視線はずっと黒板ではなく窓に向いている。全ての授業でそういう態度らしく指導不足だと僕に遠回しなクレームが来ることも多々ある。関わるなと言ったり指導しろと言ったり正直非常に面倒くさい。人に問題事を押し付けておいて外野が騒ぐなという話だ。
    無闇に彼に声をかけて周りの生徒達を刺激してただでさえ悪い彼の立場を余計に悪化させるのは流石に避けたい......が。
    理由はどうあれ、せっかく人が懇切丁寧に教えてやってるというのに聞く耳すら持たない生意気なガキにそこまで気遣うほど僕の心は広くない。

    「じゃあ、雨宮くん」

    雨宮を指名した途端、生徒達がざわついた。コソコソと僕を心配する声が聞こえる。まあ仮に雨宮が逆上して突っかかって来たとしても教壇から雨宮の席は距離があるし護身術の心得はある。心配されるほどの問題は無いはずだ。

    「─────」

    雨宮の視線が初めて窓からこちらに向いた。
    メガネのレンズ越しから見える灰色の瞳は、見ると言うより睨みつけると言った方が正しい。警戒心を固めた猫のように鋭い目つきだ。

    「聞こえてなかったかな?『Spices have long played important part in cooking all an
    the world. One of the major spices is pepper. It has over
    been used in India for at least 2,500 years』黒板に書いたこの英文を日本語に訳してほしいんだけど」
    「……………」
    「分からなかったらすぐに言ってくれて構わないからね。それを教えるのが僕の役目だから」
    「……………………………………」

    睨みつける雨宮に億さず、こちらはニコリと笑顔を向けてやる。
    怖がりな先生相手ならそれが通用してたんだろうが、誰を相手にしてもそんな舐めた態度が通用すると思ったら大間違いだ。
    雨宮の視線が僕から黒板に移り、最後にはまた窓に向いた。
    まさかの無視。流石に笑顔が引き攣りかけたところで、

    「…スパイスは長い間、世界中の料理で重要な役割を果たしてきた。主なスパイスのひとつが胡椒。インドでは少なくとも2500年前から使われている」

    淡々と正解を述べた。
    大雑把ではあるが、主語となる場所はしっかりと押さえている。どうやら舐めた態度に反して内容はその耳にしっかり入っていたようだ。

    「よく出来ました。なんだ、ちゃんと分かってるじゃないか。安心したよ」
    「...……」
    「でも当てられた時以外でも黒板はしっかり見ようね。君がそうだと牛丸先生に怒鳴られるの僕なんだから」
    「………...……善処します」

    授業をちゃんと聞けという話に善処しますって返す時点で直す気ないだろコイツ、とは思ったが笑顔を維持したままひとまず受け流す。
    内容はどうあれ新任一ヶ月目にしてようやく初めて雨宮と会話が成立した。愛想が良いとは元々思ってなかったが、思った以上に無愛想な子供のようだ。

    「明智センセーの授業、相変わらず難しーよな...俺全然分かんなかった...」
    「雨宮のやつ他の授業でも当てられたら正解言えてるし、アイツあんな頭良かったか?」
    「なんかちょっと空気怖かったけど何とか収まって良かった~」
    「ほら、まだ授業中だよ。静かにしてね」

    事ある毎に小声の会話でうるさくなるのはこのクラスの欠点だが、声をかければすぐ大人しくなってくれる所は助かる。
    しかし、今会話にあったようにここ一ヶ月の雨宮はどの授業でも舐めた態度のわりに小テストの点数は良く、授業中の出題も完璧に解答するという。この調子が続けば今度の中間試験も良い成績で収まるはずだ。前歴で下がったイメージを勉強で取り戻すつもりなのか、そこはまだ分からない。
    真面目に学生をしている分には何をしようと問題はないが、今のところその様子はないとはいえ万が一彼にこれ以上問題を起こされると責任を問われるのは担任の僕であるし、面倒だが少しは目をかけた方がいいのかもしれない。


    〇 〇


    五月の半ば。
    中間試験の雨宮は予想通りの結果だった。学年首席とはまだまだ行かないものの、去年までの彼の成績を考えたら格段に点数を伸ばしている。今度の期末試験では学年上位には食い込むのではないかと思うほどに。周りの先生方はたまたまだのカンニングしただのと疑っているが、僕はなんとなくそうは思わなかった。

    「お疲れ様。本の返却、いいかな?」
    「あっ...明智先生!はい!ありがとうございます!」

    この学校の図書室の本達の品揃えはなかなか悪くない。貸出カードを見て生徒からの履歴が古い本などは、たまにこうして借りさせてもらっている。受付担当の図書委員の生徒に本を渡すと、本好きの彼女は『この本、面白いですよね』と愛想良く返してくれた。
    時刻は十八時。下校時間はとうに過ぎているものの、彼女が下校の支度をしている様子は無い。仕事熱心なのはいい事だが、流石に限度がある。

    「後は僕が閉めておくから帰って平気だよ。早く下校しないと帰り道危ないからね」
    「あ...でも、まだ利用してる生徒が居て...彼が帰らないと流石に...」
    「え?」

    彼女は少しだけ気まずそうに視線を逸らす。その視線を追うと、窓から差し込むオレンジ色になった夕日に照らされた横顔があった。こちらの会話も聞こえていないかのように一心不乱に机に向かっている男子生徒──あれは、雨宮だ。

    「放課後になってからずっと勉強してるんです。集中してるみたいで、話しかけにくくて」
    「彼、よく来るの?」
    「はい、試験前から結構。来るたびに色んな人達にコソコソ悪口言われてて…正直集中できないと思うんですけど…気にならないみたいで」
    「……ふぅん、そう」

    雨宮が放課後に図書室で勉強しているという噂は聞いていたが、そこは本当の真実だったようだ。
    授業態度のわりに勉強自体は熱心に取り組んでいるとは、なんとも不思議な話だ。しかしどっちにしろ彼女も彼もさっさと帰らせないといけない。そうしないとこちらも帰れないから。

    「彼のことも任せてもらって平気だから。君は帰っていいよ」
    「いいんですか?」
    「うん、気をつけてね」
    「あ...はい、ありがとうございます!」

    カバンを抱えて走っていく女生徒を見送ってから、雨宮が陣取る円卓の彼の向かい側に座った。

    「ずいぶん勉強熱心だね。そんなに好きなら授業態度も改めて欲しいんだけどなあ」
    「……………………」

    声をかけて初めて気づいたらしく、ようやくこちらを一瞥したが、すぐにまたノートに視線を落とした。
    二ヶ月経っても雨宮の態度は変わらない。話しかけても年中ムスッとした顔が返ってくるばかりで、まともに会話が成立したことはない。雨宮は、徹底的に人を寄せ付けようとしない人間だった。

    「……ちゃんと話は聞いてるしノートも取ってる。問題ないだろ」
    「確かに、君この前の試験も成績良かったからね。でももう下校時刻なんだよ。ここに住むつもりかい?」
    「…それならそれでもいい」
    「良くないから言ってるんだよ。親御さん心配するでしょ?」
    「……っ、うるさいな……あんたに関係ないだろ」

    全身から『話しかけるな』というオーラを感じる。
    担任なんだから関係ないわけねえだろクソガキと、喉元まで出た言葉をなんとか抑えつつ視線だけは外さなかった。

    「…………………あと、もうちょっとで帰る」
    「いいよ。キリのいい所で止めたいだろうからね」

    『邪魔するな、放っておいてくれ』とでも言いたかったのだろう、僕の返事に雨宮は少しだけムッとした顔になった。
    無視されるよりかはマシだが、やはり僕が居て欲しくないという態度はただ漏れである。そこまで嫌われることをした覚えはないはずだが随分嫌われたものだ。それでも問題児のお子守りも仕事のうちなので放っておく訳には行かない。雨宮もそれは嫌々察しているようだ。

    「………………」

    しかし、どうも最後の問題が難問のようでシャーペンはノートに文字を書かず何度も同じ箇所をトントンと叩いている。どうやら悩んでいる科目は数学だ。開いた参考書のページを覗き見ると、まだ授業で習っていないであろう問題に挑んでいる。そんなもの分からないわけだ。
    …まあ、僕からしたら簡単な問題だ。早く帰って欲しいし、一応は教師なので助け舟くらいは出してやろう。

    「……それ、数を入れ替えてみるといいよ」
    「え?」
    「そうすれば分かりやすくなるから」

    囁かにアドバイスをしてあげると、目を丸くしてキョトンとした顔の雨宮が顔を上げた。なんだよ、年中仏頂面かと思ったけどそういう素直な顔もできるじゃないか。

    「……数を?」
    「そう。一見難しく見えるけど、見方を変えればシンプルになる。例えば、この数を1にしてみるんだ。…そうしたら、どう?」
    「……ここを、1に。………あ」

    ようやく辿り着いたようで、止まっていたシャーペンがスラスラと文字を書いていく。書き終わった答えは、ちゃんと正解を導き出していた。

    「今のを応用していけばそこのページの問題は大抵解けると思うよ。満足してくれた?」
    「………………………」

    相変わらず返事はないがコレは単なる無視ではなく、言葉が見つからないと言った様子。
    いつも鋭い目線がまだ丸いまま、雨宮はこくりと頷いた。

    「それにしても君、随分難しいところやってるね。僕が教えなかったらどうやって解くつもりだったんだい?」
    「……ネットとかで検索する」
    「そんなまどろっこしいことしなくてもこの学校には先生が居るんだから聞けばいいじゃないか」
    「………………。どうせ聞いたって前歴持ちの問題児には教えてくれないだろ」

    再びムスッとした顔に戻ってしまった雨宮は、不機嫌そうに鼻を鳴らしながら視線を逸らした。
    手早く開いていたノートと参考書を閉じて、それを乱暴にカバンに全部詰め込んで、すぐに席を立つ。

    「大人は皆そうだ。自分のことばっかで、子供の話なんて聞こうともしない。アンタだって分からないところ教えてくれたし他の奴らと比べたら普通に接してくるけど、内心じゃ俺のこと犯罪者だって罵ってるんだ。誰も信じてくれないし、守ろうともしてくれない」
    「…雨宮君」
    「……嫌いだ。あんたも、他の教師も、親も。皆」

    苦虫を噛み潰したような顔で吐き捨てて、雨宮は足早に図書室を出て行った。

    「……………」

    図らずも雨宮の内面を少しだけ垣間見てしまった。
    生粋の大人嫌い。彼が校内でやたら反抗的な理由はここから来るものだろう。しかし、彼のこの『誰にも頼らない』というスタンスは決して自立心ではない。

    「………誰も信じてくれない、か」

    雨宮がそう漏らした言葉が、酷く頭に引っかかった
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