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    manju_maa

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    manju_maa

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    獅童編導入編。「」ない。
    ここまでが長いだけで以降はほぼダイジェストになると思います。

    来栖暁に育てられたあけちごろうくんの話11月20日。
    前の時は強制捜査として蓮が警察に逮捕され、そして自殺と称して僕に殺される日であったその日。
    朝の番組でコメンテーターとして出演した最後の時に

    実は個人的に追っている男の尻尾がもうすぐ掴めそうなんです。今はそちらに集中したいので、当面の間メディアへの露出は控えようと思ってて

    なんてことを言えば『ええー!?』という同じ出演者から声が上がり、SNSでも一瞬で話題になった。
    前にそう伝えた時は怪盗団を罠にはめるために冴さんのパレスの攻略を彼らに提案した時だったけれど、今は違う。
    今回は獅童のパレスに、そんな彼らと共に赴くために。

    ───以上が、怪盗団が今までやって来た『改心』。そしてこれが、獅童正義が先の連続不審死事件の教唆犯の可能性がある証拠を集めた資料です

    冴さんに双葉に集めてもらった証拠の資料を見せながら、怪盗団として動いてきた経緯を話す。

    ………そう

    渡した紙に目を通しながら聞いていた冴さんは予想以上に静かだ。
    正直もっと胸ぐら掴まれて怒鳴られることを覚悟していたのだけれど。

    怒らないんですか?僕は貴女を騙していたことになるんですよ
    …………昨日、真がね。今貴方が言ったように自分が怪盗団だって話したのよ
    …真が?
    ええ。それ聞いて、真より何も知らなかった自分に憤りを感じた。金城が自首して以降もあの子とは話すこと何回かあったのにそんな素振り一つも見せなくてね。あの子には何度か八つ当たりみたいに酷いこと言っちゃったこともあったけど…あの子なりに、自分の道を歩み始めてたのね。貴方達みたいな仲間のおかげで
    ………冴さん

    フゥと一息吐いて、冴さんはいつもの見慣れたクールな顔つきに戻る。

    それで、貴方達の次のターゲットはこの獅童ということになるのかしら?
    ええ、そのつもりです。恐らくあの男が逮捕される事になったら困る人間が多いと思います。もしかしたら本人が全て認めても他がもみ消す可能性が高い。なので、改心が成功した時は唯一信頼できる貴女にあの男を託したい
    あら。私も貴方を騙して獅童と繋がってるとは思わないの?
    思いませんよ。冴さんはそういう人じゃないって分かってますから
    じゃあ貴方のその信頼に応えないとね

    くすくすと微笑む彼女に、自然と口が綻んだ。
    やはり彼女はいつでも変わらない。前の時はパレスができるほど心が歪んでしまっていたけれど、今の彼女にはそれがない。
    前の時含めて出会ってから今日に至るまで、彼女は自分の中にある『新島冴』のままだ。

    分かりました。貴方や真が怪盗団であるということは今は一旦不問にします。………だからどうか無事に帰ってくること
    元よりそのつもりですよ。異世界の中で死のうものなら死体はこっちには出てきませんしね
    …本当、それだけは止めてよね。国会議事堂が墓なんて
    あはは

    そういえば前の僕の身体は結局どうなったんだろう。
    人知れず死体が出てきたのか、永遠に出てこないまま暁は歳を取ったのかのか。 今となっては知る者はラヴェンツァくらいしか居ないわけだが、まあ聞いてて気分のよくなる話ではないし僕は今生きてるし、わざわざ聞こうとは思わないけれど。

    それで、呼びつけた要件はこれで終わりなのかしら
    はい、冴さんに言いたかったことは全部で…あ、もう一つだけありました
    なに?
    獅童の改心が終わったら冴さんにお渡しするものがあるんです。獅童の起訴に繋がる決定的な証拠になると思います
    それは今じゃダメなの?
    ええ。一応、本人にしっかり話してからにします。それがせめてもの償いですから
    …?


    〇 〇


    遠くの方から選挙カーの声が路地裏にあるルブランの中にまで届いてくる。
    そんな声を、屋根裏部屋に集まる怪盗団メンバーはそれぞれ耳を立てて聞いていた。

    もう色んなところで走って騒いでるよね
    ったくどこ行ってもうるせーよ。近所迷惑だっつの

    杏と竜司が窓に目を向けながら言葉を漏らす。

    それだけ選挙が近いってことよ。…つまり…
    …………明智、そろそろ俺達の実力も追いついた頃なんじゃないのか

    真に続いて蓮の視線がこちらに向く。それに合わせて、その他のメンバーからの視線も集まった。
    そんな彼らに、こくりと頷く。

    ああ、勿論

    季節は十二月の頭。解散総選挙の活動はすでに始まっている。
    彼らも、そして僕も、この半年で充分に強くなった。きっと今ならシャドウに遅れは取らない。
    パレスを歩き回る雑魚にも、そして獅童のシャドウ本体にも。

    っしゃあ!ようやっと明智の母ちゃんと蓮の敵討ちができるってわけだな!
    うん!やっとこの時が来たって感じ!
    思えば鍋を囲んだあの日からもう半年が経ったのか。早いものだ
    あっという間だったわね。…けど、明智くんからしたらこれからが本番なのよね。これまで沢山助けられてきたんだもの、気を引き締めましょう
    明智がわたしの本心を言い当ててくれたから、わたしは今ここに居る。絶対に借りは返すぞ
    ええ、私も。明智くんとモナちゃんが足手まといの私をパレスのお父様のところに連れて行ってくれて道を示してくれたから、ここに居ることができたしお父様を止めることができた。…だから今度は私達が貴方を獅童の元に連れて行きたい
    よーっし!これで全会一致だ!な、リーダー!
    ああ。次のターゲットは獅童正義で決まりにする。…本当に、待たせたな。明智
    ……………

    不思議な光景だった。
    前の時も騙し合う関係だったことは抜きにしても、自分が完全な仲間として迎え入れられていないことは分かっていて。だからこそ何か発言して彼らの視線がこちらに向く時も、それはヒシヒシと感じていた。
    だけど、今の彼らにはそれが全く無い。こちらに向く眼差しは真っすぐで、裏もない、信頼する者に向けられるものだ。
    今はそれが嬉しく感じる。まさか『それ』を彼らに対して思う日が来るなんて。

    ……一つだけ、君達に謝らせてほしいことがある

    ならばこそ、伝えなければならないと思った。

    んだよ改まって
    …………僕は、今まで君達のことを仲間としてしか見ていなかった。頭数が増えていくことに対して戦力が増えたとしか考えてなかった。これは、ある意味裏切りにも等しいと思う。……本当にすまなかった

    椅子から立って、床の木目しか見えないくらい深く頭を下げた。
    謝って許されることではないけれど、これは前の時のことも含めた言葉だ。前回も、そして今回も、僕は彼らを仲間として見れていなかった。失望され、あらゆる罵詈雑言を受ける覚悟はできている。
    それだけのことを彼らにしてしまったのだから。

    それ、明智くんからしたらとても大事なことだもの。仕方ないよ
    え…

    春の言葉に顔を上げれば、笑みを浮かべたままの怪盗団がこちらを見ていた。
    皆が皆、笑ってる。聞き間違えようがないほどしっかりと言ったにもかかわらず。

    そうそう。魔王に単騎で挑むとか基本無理ゲーだからな。ストーリーが進むたびに増えていくキャラを戦力として見てしまうのはRPGあるあるだ。むしろそういう目で見てなかったって言われた方がビックリだったぞ
    双葉の例え話はちょっと分からないけれど…その通りよ。強敵揃いのパレスに挑んで改心させるという貴方の目的を考えれば自然なことだと思う。謝ることは何もないわ
    だが明智が蓮を筆頭に俺達のことも名前で呼び始めた時点で俺は仲間としても認められたと思っているぞ
    それ思った!最初の頃は呼ばれても苗字止まりだったもんね。私達もほんとは吾郎って呼びたいんだからね?モルガナだけ名前で呼んでるのずるいよ!
    ニャフフ!ワガハイのカリスマの前では流石のゴローもイチコロってことだ!
    俺はなんとなく明智って呼び方の方が落ち着くけど
    そりゃお前だけだっつの!
    …………………

    言葉が出なかった。まさかこんな言葉が返って来るとは夢にも思ってなかったから。
    そういえば、自分でも気づかないうちに彼らのことは名前で呼ぶようになっていた気もする。本当にいつからそうなっていたんだか、全く思い出せないけれど。確かに自分は彼らを名前で呼んでいた。
    ずっと名前で呼ぶほどの相手ではないと他人に対しては一線を引いて、その線を越えてくる人間なんて冴さんか蓮くらいしか居ないものと思っていたような、この僕が。
    ずっと見下してたはずの奴らにここまで絆されるなんて。馬鹿みたいだ。笑い話にもならない。

    (…ああ、本当に)」

    仲間なんていらない、くだらない、と思っていたはずなのに。今はそれが、悪くないと思えてしまう。
    悔しいけれど、祐介の言葉に否定する要素は一つもなかった。

    そうだね。勿論今は、君達をそんな風には見てない。…皆、心強い仲間だ
    ああ、俺達にとってもお前は大切な仲間だ。……一緒に獅童の改心をさせよう、明智
    …うん

    蓮と顔を見合わせて、頷き合う。
    そうしてパレスの攻略は明日から。蓮に話があるからと今日の集まりは解散となった。
    全員が帰り、モルガナも空気を読んで双葉と一緒に佐倉の家に付いて行って、屋根裏部屋には僕と蓮の二人きりとなる。

    それで、話ってなんだ
    …皆には一つだけと言ったけれど、実のところ君にはもう一つ謝りたいことがあるんだ

    本当は一つどころか沢山謝る所は多いけれど、今は割愛する。
    ポケットからスマホを取り出して、ギャラリーアプリに保存された動画の再生ボタンを押してから蓮に差し出す。

    これを見てほしい
    ……これは

    蓮に見せた動画は、蓮の地元に赴いて録画したあの日の映像だ。

    …あの場に居たのか、お前
    居合わせたのはたまたまだったけれど、相手が獅童だったからね。録画に徹させてもらったよ

    勿論嘘だ。
    この動画を撮るために近場のホテルに一泊してまで彼の地元に足を踏み入れた。
    たまたまなんて、そんなことあるわけがない。

    それで、これを俺に見せてどうするつもりだ
    君に対してどうするというわけじゃない。獅童の改心が成功してアイツが警察に出頭したタイミングで、この動画は冴さん…真のお姉さんである検事に証拠として渡す。この動画が証拠として受理されることがあれば再審が始まって、恐らく君の無実は確実に証明されるはず。僕も必要であれば目撃者として証言台に立つつもりだ
    …っ!
    一度は君を見捨てた男の話だから信じられないかもしれないけど…あの日に君を助けなかった分、僕の持てる全ての力を使って今度こそ確実に君のことを救ってみせる。だから、信じて待っててほしい
    …明智

    戸惑いに揺れていた瞳は細くなって穏やかな微笑みに変わった。
    蓮は手を伸ばし、こちらの手を握ってきた。手袋越しで伝わる蓮の体温は温かい。

    前も言ったろ。俺は班目パレスのあの時から、お前のことを信じるって。動画も、俺のことも、明智を信じて託すよ
    蓮…
    だから全部終わったら、色んな所に行こう。ビリヤードとかダーツとかゲーセンとか、また二人で勝負しながらさ
    ………気が早いよ。まだパレスの攻略すら始まってないのに

    つい笑ってしまった。
    本当に気が早い蓮もそうだけど。そんな彼の提案に魅力を感じている自分にも。

    〇 〇

    ――そして翌日。
    獅童のパレスに繋がる場所である国会議事堂の前に、怪盗団の皆でやって来た。

    確か獅童にパレスがあることはもう確認済みなのよね。キーワードは分かっているの?
    勿論。…『獅童正義』、『国会議事堂』、『船』だ。…行くよ

    全員がこくりと頷くのを見届けてから、イセカイナビのナビゲーションを開始させる。
    そうして景色は一変した。議事堂の建物の外観自体は変わらないものの、その周りの景色は現実世界のそれとはまったく違う。
    日本やその国民がどうなろうと自分と周りの人間だけは生き続けるという獅童の歪んだ認知が生み出したパレス。それが赤い海に沈んだ日本を突き進むこの豪華客船だ。廃人化ビジネスの概念がなくとも、アイツの認知はここに行き着くらしい。

    なんだこれ…
    なんて酷い光景なの……
    お父様にとってのオクムラフーズも大概だったけれど…こんなのって…
    歪みがひでえ男とはゴローの話を聞いてから思ってたが、まさかここまでとはな…
    こんなこと考えてる奴が国のトップになるとか絶対ダメだろ!
    しかし民衆の殆どは今やあの男を支持している。心の内ではそんな支持者すらもこの赤い海に沈めているとも知らずにな
    さっさと改心させて全部認めさせよう!あんな奴の好きにさせたら本当にこの国潰れちゃうよ!
    杏の言う通りだ。こんなクソみたいなパレスはさっさと潰すに限る。

    …遂にここまで来た。全てを思い出してから約三年。長かったようで短い時間だった。
    前は獅童に自分の存在を認めさせようと、生き残ったジョーカーとその他の怪盗団をしっかり殺すために後を追って。
    そして今回は、そんな怪盗団と共にその獅童を改心させて母の無念を晴らすために。

    (絶対に失敗は許されない)

    蓮を冤罪で付いた前科から救って、暁の命を無駄にしないためにも。
    絶対にあの男に勝つ。その為に、ここまで来たのだから。

    ……行けるね?蓮
    ああ。……行くぞ、皆!

    蓮の掛け声で全員が頷く。
    そうして、獅童のパレス。海に浮かぶ国会議事堂の中に僕らは足を踏み入れた。
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    manju_maa

    DONEタイトル通り。二番煎じに二番煎じを重ねてテンプレを煮詰めたような話。たぶん主明
    ※ペルソナとか異世界とかなんもない本編とは全く関係ない謎時空
    ※明智が架空の病気(※ここ大事)で心臓弱い子
    ※明智ママがガッツリ出てくる。
    ※なんでも許せる人向け
    小学生の病弱吾郎くんと蓮くんが出会う話①この街には小学校の登校路から外れた道を行くと、低めのフェンスに囲まれたかなり大きい家がある。アニメなんかでよく見るお屋敷のそれ。道路も公園も、なんなら住宅も少ないその区域に静かにひっそりとそれは佇んでいた。
    フェンスの内側は芝生が生えた庭があって大きな桜の木が一本生えている。花見し放題だななんて思いながらボーッと眺めていたある日、飛び交う桜の花びらに混じって木の陰に隠れていた屋敷の二階の窓から外を覗く奴が居ることに気づいた。
    チョコレートのような、牛乳をたっぷり入れたココアのような、そんな茶色の髪を風で揺らしながら。夕方近いとはいえまだ太陽が昇っている時間帯にパジャマの上からカーディガンを羽織るという格好で、そいつはずっと外を眺めていた。髪は長いし顔も女の子みたいで、下から見上げるだけじゃ性別は分からない。年齢は多分同い年くらいだと思う。
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    manju_maa

    PROGRESSごろうくん視点。獅童編中盤の全カットした空白の二週間の話の一部とヤルオ討伐後の話。「」ない。
    本当は本編に入れたかったけど時間が足りなくて泣く泣く書くのを止めたけどやっぱり書きたかったから書いたシーン
    来栖暁に育てられたあけちごろうくんの話~番外編③~色んな人の世話になりながら、39度近くまで上がっていた熱は完全に引いた。今は蓮が診せたという医者に言われた通り、静養期間だ。身体が元気なのに学校にも仕事にもなんなら外にも出れないというのは、中学時代の謹慎中の三日間を思い出す。
    熱がある間は昼間は双葉に、夜から朝は蓮が泊まりがけで付きっきりでそばに居たが、熱が引いたことで蓮はひとまずルブランに返した。
    『こうなったのは俺のせいだから』『お前は放っておくとまた無理するから』と色んな理由を述べられて拒否されたが、ならモルガナを監視役として引き続き家に置くからという妥協案を出すと、渋々承諾した。とはいえ昼間は双葉が家に乗り込んできて持参したパソコンをカタカタといじっている。蓮と約束ノートなるものを作って、それのおかげで一人で外出もできるようになったんだと自慢げに話していた。『明智はわたしの恩人だからな!』と満面の笑みを向けられたときは眩暈を起こしかけたが何とか耐えた。
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