過日 追憶 宵花火(の、先)「安心しろ、伴」
徐ろに、真剣な眼差しと落ち着いた声音でそう口を開いた坂ノ上に、伴は毒気を抜かれて軽く目を見開く。
「え……?」
ふ、と坂ノ上が柔らかく微笑んだ。
「もしも、万一お前が先なら、俺は即座に後を追うからな。今度も一人にゃなるめえよ」
***
殊更に砕けた口調になるのは飾らない時の癖だと知っている。昔からずっと、そうだった。
「……訳わかんねえ」
──ああ、ったく、ホント。
「あんた、やっぱりおかしいですね」
口元が緩んでしまうのを、どうしても抑えきれない。
締まりの無くなる自分の顔を自覚して、ごまかすようにそっぽを向きながら軽口を叩く。
「ナントカは死んでも治らないってやつ、アレ本当だったんだな」
「むっ! 何だとぉ⁉︎」
士官だった頃の威厳なんてカケラも感じさせない坂ノ上さんが、笑いながら怒ってみせる。
全然腹は立たねえけど、俺もそれに応戦する。
ガキのじゃれ合いみたいに、お互いを小突き合う。
触れ合う箇所はどこも温かくて、湿り気があって──
どうしようもなく俺たちは、生きちまってる。
いつまでかは分かんねえけど、多分いつまでもこのまんまで。