無題いつものようにヴェールの身体を後ろから抱き締め、薄い腹に手を回した時、ドッピオは手のひらにいつもとは違う感触を覚えた。
服の中に手を入れて直に腹を触ると、それなりに引き締まっていたはずの腹筋は微かに柔らかく若干ではあるものの指先で摘むことが出来る。
「! ちょ、ドッピオっ」
「ヴェール、ちょっと太った?」
「っ、!」
ふにふにとした珍しい感触を楽しみつつ揶揄いの色を含んだ声で問い掛ければ、ヴェールはビクッと身体を揺らして顔を赤くした。
顔を近づけて覗き込むと、耳の先まで真っ赤にして涙目になったヴェールが恥ずかしそうに唇を噛んでいる。
「……ヴェール?」
「は、離して! 今日はもう帰る……!」
「えっ何で! 来たばっかりだろ!?」
「いいから離せ!」
ジタバタと暴れ始めたヴェールの身体を強く抱き締め押さえ込む。変わらず腹に触れたままのドッピオの手をバシバシ叩きながらヴェールが涙を散らした。
腕に落ちて来た雫に驚いて、ドッピオが耳元で優しく問い掛ける。
「……もしかして、気にしてた?」
「……してる」
「そっか、ごめん」
鼻をすすりながら振り向いたヴェールの赤い目尻にキスを落としてやりながらも、ドッピオの手は依然恋人の柔らかい腹を揉んでいる。
ヴェールは気にしているようだが、そもそも彼の生活スタイルからすれば今まで太っていなかった方が不思議なのだ。
「でもさ、俺はこの感触、結構好きだぜ」
「……本当に?」
「うん、なんか……美味しそうだし?」
腹の上に乗った柔らかな肉の感触を楽しみながら笑えばヴェールの鋭い目がカッと見開かれ、地雷を踏んだことを知るも時すでに遅し。
「誰が豚だ!!」
「言ってませんけど!?」
飛んできた裏拳は、甘んじて受け入れた。