断罪、あるいは贖罪とも言ふキミのことが好きだと気づいてしまったのはいつだろう。
初めて会った時か、学級裁判でのキミの勇姿か、ボクを理解しようと奮闘する姿か、あるいはその全てかもしれない。
脳がそれを理解した瞬間、とてつもない嫌悪感が胸の内から湧き上がった。
キミをそういう目で見ている、その事実がとてつもなくおぞましい。
「…な、狛枝、今日はいい天気だな!」
ボクがそんな事を考えてるとは露知らず、キミは今日もボクに『トモダチ』としてボクと接する。
「狛枝、疲れてないか?お前はあんまり体力ないんだから、無理すんなよ?」
「友達になってほしい」ボクがそれを告げたのは七海さんで言うところの1周目?の世界線だっけ。
言い出しっぺはボクだ。ボク自身がこの関係に名前をつけてしまった。
あのコロシアイ生活を経ても、キミは受け入れてくれた。キミの優しさにつけ込んでしまった。ボクはなんて傲慢で愚かなのだろう。思わず吐き気がこみ上げる。
「ううん、大丈夫だよ日向クン」
全然大丈夫なんかじゃないよ、別の意味で。なんて言葉は飲み込んで応えた一言。うんうん唸る僕を気遣ってくれたのだろうか。優しいな。
やっぱり、こんなどうしようもないボクと一緒にいてくれるだけで一生物の幸運だ、ずっと『トモダチ』でいたい。
はたまた欲深いボクは願う、その一線を超えてしまいたい、キミと『コイビト』になりたい、胸がじゅくじゅくと痛む。
あーあー、気持ち悪いな。こんな感情を内に秘めている自分がたまらなく気持ち悪いな。拝啓、神様日向様ボクを許してください。いっそ殺して楽にしてください。いや、それすら鳥滸がましいか?
「ねぇ、日向クン、…………いや、十分素材も集まった事だしさ、みんなの所戻ろっか」
なんだかいたたまれなくて、ちゃぷちゃぷと足取り早く水面に波紋を作る。
意地っ張りなボクが、またあの時みたいにキミとの関係を上書きさせてくれ、と宣言できるのは、あと何周先の未来かな。
「…そんな急ぐことないだろ、ゆっくり帰らないか?お前に話したい話がいっぱいあってさ…はは」
屈託のない笑顔と共に、頬をかくキミ。
全てが愛おしく感じてしまい、ボクの汚れた眼は、一つ一つの動作を捉えて離してくれない。
やめてくれ。ボクにそんな笑顔を向けないでくれ。そんな、そんな笑顔を向けられたら余計に。
のろまなボクに、この海は深すぎるから。