ペーパー用小話(ハザジン)「キセキって、どんな確率から『奇跡』って言うんでしょう?」
「はぁ?」
ぶっきらぼうに差し出されたチョコレートを前にして、真顔でそんな返事を返してきた相手に、ジンは思わず眉をひそめた。何を言っているんだコイツは。胡乱な視線を投げかければ、いつもニコニコ、うさんくさいまでに笑みを絶やさないハザマがひどく真剣な顔で見返してくる。表情の消えた顔には、常に纏っているゆるい雰囲気など何処にも無い。長めの前髪に隠れがちな金色の瞳が刃物のように鋭く輝き、整った顔立ちと相まって、いっそ人外じみた凄みを感じる。コイツこんな顔してたのか、とジンは内心でやや引き気味に息を呑んだ。気の弱い某金髪の秘書なんかが見れば、涙目で逃げ出しそうなご面相である。
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