タイトル未定「ほんっとごめんね、こはね。私のせいでこんな事になっちゃって……」
「う、ううん。杏ちゃんあまり気にしないでね?」
目の前の杏ちゃんの顔が何とか見えるぐらい薄暗い中、もう一度手を周りに伸ばしてみるけど何か壁のようなものに当たって押してもびくともしないし、指を引っ掛ける所もないつるつるとした手触りが返ってくるだけ。
――今私と杏ちゃんは、狭くて暗い謎の空間に抱き合うような形で閉じ込められている。
抱き合ってると言うか、抱きしめないといけないぐらい狭いんだよね。
周りが何も見えないのは不安でも、私が落ち着いていられるのは杏ちゃんと一緒だからだと思う。
でもその杏ちゃん自身は、ここにいる事になった原因が自分のせいだって落ち込んじゃってるけど……。
事の発端は今日ミクちゃん達が居るセカイに来て、レンくんとリンちゃんとこのセカイの入り組んだ道の話をした事だった。
色々な抜け道を知っているレンくん達も、このセカイの全部を把握してる訳ではないみたいで。
『じゃあちょっと探検して、私達で新しい道見つけちゃおっか』
杏ちゃんの言葉に、このセカイの事をもっと知りたいと思っていた私は頷いて、練習も終わった後だしと早速皆で――東雲くんはくだらねぇって言ってたけど、青柳くんが面白そうだって目を輝かせてたからかな。最終的に一緒に来てくれた――出かけたの。
レンくん達も普段あまり行かないって場所まで着くと、皆それぞれ一人だったり自分の相棒と一緒に新しい道を探し始めた。
終わったらここで合流ってなった場所に帰れる自信がなかった私は、ビビッドストリートに似てるから私と一緒なら大丈夫! って言ってくれた杏ちゃんと探索をし始めて少し。
「あれ……?」
ある路地裏を覗き込んだら、真っ暗で何も見えない事に首を傾げる。
今まで通ってきた道は薄暗くても何となく道が続いてるのは見えてたのに、おかしいな。
「あれ? こはね、どうしたの?」
「杏ちゃん。あのね、この先変に真っ暗で何も見えないなって」
「え? わ、ほんとだ。何だろ……ふふ、瑞希に借りた漫画なら、ここから知らない世界にワープできたりね」
そう言って臆せず杏ちゃんがその路地裏を覗き込んだ、その時。
「えっ……!」
「あっ、杏ちゃん!?」
するっと、杏ちゃんの身体が暗闇に飲み込まれるように入り込んでいって。その様子があまりに怖くて、でも何とかしないと杏ちゃんがって私は手を伸ばし――……そうして、今に至る。