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    kyuu_ka

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    kyuu_ka

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    まだ校正前なので色々と変わると思うんですがこんな感じで書いてます…

    作業進捗です 年の差杏こはちゃん。年の差がちょっと変則的(?)ですすみません。

     キィン、と甲高い耳鳴りが響くと耳の奥が痛んでくらりと目眩がした。
    「痛っ……!」
     反射的に目をぎゅっと瞑り、耳を両手で覆い立ち止まる。初めての感覚にやばいって感じたけど……。
    「あれ……?」
     恐る恐る目を開けると、視界ははっきりとしてるし耳鳴りも痛みももう無い。
    「何だったんだろ……まあ道のど真ん中で倒れなくてラッキー、かな?」
     理由は分からないけど、ビビッドストリートの道中で倒れたりしたら大騒ぎになっちゃうだろうし、何事も無いならそれで良いか。
     そこからは気にする事無くまた家に帰ろうと足を進め始めて少し。ある事に気づいて私は再度足を止めてしまう。
    「えっ? ここってこんなんだっけ……?」
     驚く私の目線の先にはライブハウスの看板がある。見慣れた名前が描かれているそれは、昨日通りがかった時に見たものとデザインも電飾も変わっていた。
    「おじさんリニューアルするって言ってたかな? 外観も何か違うし……明日聞いてみよっと」
     店主のおじさんの性格を思えば、これだけ外観を変えるなら話に来るだろうし、そもそも工事してる様子を私が見ないはずないんだけどな。
     首を傾げながらも、明日確認すれば良いしと大して気にせずすぐに歩き始める。
     夜道でもここは街灯とお店やライブハウスの明かりや周りの喧騒があるから怖くないし、むしろ大好きなぐらい。
     軽い足取りで歩いているとライブ終わりなのか人だかりが出来ている所に当たり、楽しかったと盛り上がっている人達が見えて微笑んでいると聞き覚えのある声が耳に届く。
    「お前ら今日マジで良かったな」
    「ん? この声って……」
     振り向いてみるとこちらに背を向けた男の人がいて、雰囲気から知り合いで間違いないだろうと声を掛ける前に興奮気味の声が響いた。
    「へへ、洸太郎さんに褒められるの嬉しいな!」
    「おう! なーなー、また今度一緒に歌ってくれよ洸太郎さん!」
    「わーってるって。俺だって忙しいんだからもうちょい待ってろ」
    「洸太郎……“さん”……?」
     思いがけない呼び方に伸ばしかけた手がぴたりと止まる。
     えっ、洸太郎って私の知ってる洸太郎であってるよね? 洸太郎に対してすごい尊敬してます! って感じの話し方してる子達だけど、洸太郎に後輩いるって聞いた事ないけどなぁ。
     考えるより先に話を聞いた方が早いと、洸太郎らしい人にそっと声を掛けてみた。
    「えーっと……三田、洸太郎さん……?」
    「ん? って、その声杏だろ? いい加減こう言う時にからかってくるの止め……ってなぁっ」
    「きゃっ な、何?」
     一応人間違えの可能性もあるしフルネームで呼べば、やっぱり洸太郎だった目の前の人物はこちらを向いて早々驚きの声をあげちゃうから変な声出ちゃったじゃん。
     目を見開いてこちらを見てくる洸太郎に、私はあれ? と抱いた違和感に首を傾げる。
     伸びた髪を後ろで結ってるのもそんなに髪長かったっけって思うし、顔つきが落ち着きすぎてるって言うかこう……。
    「えっ、洸太郎老けた……?」
     つい思った事そのまま口に出してしまえば、洸太郎は噛みつくように言葉を返してきた。
    「おっ前それ傷つくからな ってか俺が老けてるってより、俺には杏のがなんか幼く見えるんだけどよ。昔みたいな格好だしさ」
    「幼く? 私が? 昔……?」
     何それ? 私の言葉に反射的に噛みついただけな訳じゃなさそうなのは、わっと叫んだ後の冷静で落ち着いた声色から伝わってくる。
     でもじゃあどう言う意味で変な事言ってきてるんだろ……。
     考える間もなく、洸太郎の背からひょっこり顔を出した彼の後輩達が今度は声をあげた。
    「あれっ? もしかしてキミ、“AN”のファンとか?」
    「はい?」
     見知らぬ人に呼び捨てされたのも驚いたけど、私が私のファン? いよいよ何が何だか
    分からなくなる私を置いて目の前の人達は話を進めていく。
    「ああ、ANの女の子のファンって格好真似する子多いよな。ANカッコイイし。ねね、AN俺も好きなんだ。ちょっとどこか入って話しよーよ」
    「こらお前らっ! 流れるようにナンパしてんじゃねーわ!」
    「えー、だって可愛いし……」
    「いやそりゃそうだが、俺にはどーにも杏本人っぽく感じるっつーか……」
    「とか言って、洸太郎さんもナンパの口実にしようとしてね?」
    「してねーって!」
    「あー……盛り上がってる所悪いんですけどー」
     洸太郎が何とかしようとしてくれてるし、状況は分からなくてもナンパはお断りだしと間に入ろうとした時だった。
    「――お待たせ」
    「えっ……?」
     私の心を離さず、いつだって私の心を躍らせる声。でも、今耳に届いたそれは何だかいつもよりうんと甘く感じて――……。
     私に身体を寄せて腰を抱いてきた声の持ち主の顔を見れば、彼女は魅惑的な瞳を細め微笑んでから洸太郎達に向かって言う。
    「ごめんね洸太郎くんにキミ達。この子、杏ちゃんの親戚の子なんだ。丁度迎えに来た所だから、連れて行かれるのはちょっと困っちゃうな」
    「俺は連れてくつもりはなっからねーから! おいお前ら、ANの話しにどっか行こうって張り切ってたけどどーすんだよ」
    「え、えぇっ、それは……」
    「こ、KOHANEさんの連れでAN……さんの親戚の子とか知ってたら声かけてねーっすよ……。か、帰ります!」
    「ま、それが懸命だな。悪ぃなこはね。こいつらお前らのファンだからさ、親戚とか知ってたらほんとナンパなんてバカしなかったろうし許してやってくれ」
    「ふふ、怒ったりしてないから大丈夫だよ。ファンだなんて嬉しいな」
    「こ、今度のステージめっちゃ楽しみにしてます!」
    「ありがとう」
     すっかり場をリードした彼女が微笑んでお礼を言えば、彼らはぱぁっと笑顔になり洸太郎に背を押されて連れて行かれる間もずっと興奮気味に手を振り続けたままだった。
     入る余地がなく黙ったままだった私は、三人の姿が見えなくなってからようやくはっとして再度彼女の顔を見る。
     セミロングの亜麻色の髪にはピンク色のメッシュが入っていて、耳には星型のピアスが揺れていた。
     甘い香水も、唇を彩るピンクも。彼女が纏うもの全部が私の知る女の子とはかけ離れているのに。
     それでも……あの声を聞いてしまえば。私の感覚とか感情とか全部が、その子以外に有り得ないのだと確信を訴えるんだ。
     恐る恐る、私は目の前の彼女に問い掛ける。
    「こはね……なの……?」
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