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    かいこう

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    かいこう

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    後悔/花流
    #백호태웅_100분
    #花流全力_100分
    テーマ『酔中真談』

    #花流
    flowerFlow
    #花流全力_100分

    後悔 今日、引っ越してきたばかりで、あちこちに段ボールが積んである、そんなマンションの一室で、桜木は流川に言われた。
    「…てめーに告白する気なんか、なかった」
     流川の横顔をまじまじと見やる。驚いて、咄嗟に返事ができなかった。流川との距離は近い。肩に腕を回して、ほとんど、抱き込んでいるような体勢だった。アルコールくさい息が混ざり合ってどちらのものかと分けられない。床に、近所のスーパーで買ってきた惣菜や寿司やハイボールの缶を広げて、夕飯にした。ダイニングテーブルは内見の時から決めていた位置にあったが、卓上に片づけ途中の食器や雑貨を置いているので、一日ぐらいいいかと、二人して、リビングの床に座り込んでいる。昼過ぎに引っ越し業者によって運び込まれたそれぞれの荷物や二人で選んだ家具など、予定では、もうそれぞれの場所に収まっているはずだった。だが、いよいよ、二人で暮らせるのが嬉しくて…高校一年の晩秋からつき合い始め、高校卒業とともにバスケットのために渡米するまでは、一人で生活していた桜木のアパートに流川が入り浸っていたものの、アメリカでは、生活の拠点が離れてしまい、こうして同じ空間で、寝食を共にできるというのは何年ぶりだろうかと、いちいち感動してしまって、すぐそこに居る流川に見惚れるばかりで、片づけに集中できなかったことを思い出す。日本からのオファーに応える形で戻ってきた。アメリカの時と同様にチームは違うが、それぞれの拠点の真ん中で、一緒に暮らせるのでありがたい。マンションを決めるのも、使っていたものを使い続けるか新しく買うかと家具について相談するのも、楽しかった。ようやく日本でもできるようになったから、結婚もする。婚姻届けの証人の欄を誰に書いてもらうか、という話から、バスケを中心にしたいとほとんど恋人らしいことをしなかったらアメリカ時代、部活でも学校でも放課後でも振り返ればべったり過ごしていた高校時代を、飲み食いしながら振り返っていた。その流れで、ぽつんとこぼした流川は、結構酔っている。たらふく食べて、いっぱい飲んだからだは、重たくて、熱かった。やや下がった瞼はアルコールのせいだけではなく、眠さの現れでもあるだろう。
    「そりゃあ…何でだ?」
     唇を一度引き結んでから、桜木は尋ねた。軽く唸った流川の頭がぐらぐらと揺れる。出会った頃から変わっていない髪型の、長めの前髪が、流川の目元をすっかり隠した。
    「別に」
    「言えよ」
     持っていた割り箸をぱらぱらと床に落として、流川が自身の前髪を弄る。
    「バスケに専念したかった…から」
    「ふーん?」
    「てめーみてぇにデレデレしてる暇はねー」
    「何のことだよ」
    「ゴ…赤木先輩の妹」
    「ハルコさんな…なるほどなぁ」
     桜木は流川の肩に回していた腕を外した。尻をずりっと動かして向かい合わせになる。片手で流川の顔を持ち上げ、逆の手で流川の前髪をかき上げ、顔つきを検めた。そうして流川の目を見ていれば、流川も視線を交わらせてくる。時々、ちらっと焦点が下がった。眠気を含んで閉じそうな瞼とは違う動き。流川がどこを見ているか、桜木にはすぐに分かった。唇を舐めれば、案の定、舌の動きをなぞる眼球に桜木は笑ってしまう。流川がいよいよ目を閉じた。これもどういう意味か、桜木には分かっている。今から寝るぞ、ではなく、キスをしろと催促しているのだ。桜木は両方の手で、流川の頬を揉む。自分の希望が叶わず、むっと眉間に皺を寄せて不満を滲ませる目に、また笑わずにはいられなかった。口元がにやにやと緩む。対して流川の表情は凶悪になっていった。
    「ろあほう」
    「うはははは」
    「なんれ、き、きふ、ちゅー、ひねー」
    「あー?」
     喋ろうとする気配に、むにゅ、と頬を圧迫して、唇を尖らせてやる。不明瞭な物言いが、さらに、桜木の笑いを誘った。笑いながら、じっと流川の目を覗き込む。
    「おめーがそんなこと考えてたなんて、知らなかったぜ」
     黒い目に映る自分を見つめた。笑っている。流川の目の中に居る自分と、その目の持ち主である流川の対比と、そんな流川と見つめ合っている己の存在感が、わけもなく、不思議なものに感じられた。
    「ひとつ言っておきたいことがあんだけどよ」
    「ちゅーひろ」
    「俺はおめーに告白してよかったぜ」
     流川が口をつぐむ。桜木は間違いに気づいた。言いたかったことはこれではない。
    「ていうか、おめー、俺に告白してねぇくせに何を言ってやがる」
     むっとした様子で睨んでくる流川の頬から手を離した。
    「間違ったことは言ってねー、あん時、俺から告白するつもりはなかったってだけの話だ」
    「そうかよ、バスケに専念できねぇぐらい、俺様が好きだったくせに?」
     怖い顔をした流川が、じわっとこめかみの辺りを赤らめる。
    「俺にデレデレだったんだろ?」
    「さー?」
    「自分で言ってた」
     流川の顔面の紅潮が範囲を広げた。
    「そんぐらい俺のことが好きだったのに、何で言わなかったんだろうな、そんで、何で今になって言ってんだよ」
     高校時分から、プロになっても、鋭いドライブを見せるバスケスタイルから、オフェンスの鬼と呼ばれている男に言葉を投げる。流川のまなざしがふと、遠くなった。この瞬間、流川の目に映っていない。
    「…言えねーぐらい、好きだったから」
    「ふぬ…っ」
    「初恋、で、どーしたらいいか分かんねー…」
    「おう」
    「どあほうはマネ…ハルコさんにデレデレしてっし…」
    「おー…」
    「アメリカ行きてーし、大会は勝ちてーし、バスケしてりゃてめーはそこに居るし、だから、専念してりゃいいかって」
    「ふぬぬ」
    「かっこわりぃからほんとは言いたくなかった」
    「まあ酒のせいだからしょうがねぇ」
    「…けど、どあほうが俺と暮らせるのが嬉しいつって、すげーアホ面してやがるから」
    「あ?」
    「…やっぱり、告白しときゃよかった、俺から、俺の方が絶対、どあほうより先に好きだっになってたのに」
     後悔が強く滲む物言いに桜木は再び何も言えなくなった。代わりにかーっと顔が熱を帯びていく。そんなに俺が好きか…と涙が出そうだった。
    「はっはっはっ、告白に関しておめーはど素人だからな、五十回もしてきた甲斐があったぜ」
    「威張ってんじゃねー」
    「心臓、ぶっ壊れるかと思うぐらい緊張してたけど」
    「壊してやりてー」
    「おっかねぇよ」
     物騒なセリフを口にする流川に肩を揺らして笑うと、桜木は缶に残っていたハイボールを煽る。自分が言ったのかと思った。ひどく驚いて、鼓動が動揺している。桜木も、流川に告白するつもりはなかった。バスケ以外はどうでもいいと思っているような男に惚れて、初めて、誰かを好きになって初めて、五十回も振られてきて初めて、告白しないでおこうと決めたのに。我慢できなかった。バスケしか見ていない相手に、同じコートに立っておきながら、バスケに集中していないのかと呆れられるのが怖かったのに。どうしても我慢できなかった。目尻に滲んだ涙を拭う。
    「泣いてんのか」
    「目敏いな」
    「何で」
    「幸せだから」
    「そうかよ」
    「すげぇ幸せ」
     そう言って桜木は流川に口づけた。すぐに酒くさい唇がキスに応えてくる。今もまだ、怖かった。なあ、俺とこうしてていいのかよ?バスケにだけ関わっていたいんじゃないのかよ?酔いに任せて聞いてしまいたい。だが桜木はぐっと堪えた。いつの日か、聞いておけばよかったと後悔するかもしれない。桜木は恐怖から目を逸らして、流川の口内に唾液を送った。だけど後悔するのは今夜じゃない。桜木は酒と流川からの愛情で酩酊する中、もっと酔いたいと、口の中に差し込まれた舌に軽く噛みついた溢れた唾液を何度も飲み込んだ。
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    かいこう

    DONEタオル/花流
    花流の日まで後6日~
    タオル 自分の洗濯物を片づけるついでに、流川のシャツや下着類もしまってやろうと棚の引き出しを開けようとすればがたがたと引っかかる。ふぬっと強引に開けてやった。中の衣服は雑然としていて、これが開けにくかった原因かと、桜木は呆れる。
    「あいつはよぉ…」
     バスケ以外はずぼらなところがある男の引き出しの中身を、仕方がないなと整理してやることにした。ここのところ、遠征や取材で忙しかったのを知っている。甘やかしているな、と思いながら、それでも普段の生活で、不得手ながら家事に勤しむ姿に接しているので、まあいいか、と畳み直し、きれいに詰め始めた。
    「ぬ…?」
     引き出しの奥に古びたタオルが入れられている。見覚えのある薄れた色合いや洗濯を重ねて薄くなってしまった生地の具合に、目を瞬かせた。それは、桜木の親が桜木が生まれる前に赤ん坊の肌かけにと桜木のために買ったもので、赤ん坊の時分から、幼稚園、小学校、中学校と育つ中、ずっと桜木の手元にあったタオルである。おしゃぶりの代わりにタオルの角をよく吸っていたと言われたり、そのタオルがなければ、昼でも夜でも寝られないと泣き喚いたり…自身の記憶に残っているもの、いないもの、合わせても思い出がたくさん刻まれている桜木の大事なタオルだった。小学校を卒業する頃にはもう肌かけにはしておらず、代わりに枕カバーとして使っていたものの、高校入学を翌日に控えた夜、中学校での最後の失恋から立ち直れなくて、可愛い恋人なんてこの先現れないんじゃないか、もしいるなら顔が見てみたい、好きになった相手とつき合いたい…と、布団に入って枕を、大事なタオルを、べそべそと涙で濡らしていれば、視界の端で模様がひとつ、すっかり消えて元々のタオル地の色が露わになっていることに気づき、束の間失恋の辛さも忘れて、桜木は起き上がると慌ててタオルを確認する。白いタオルに淵をぼやかせた青空と、元気よく飛び跳ねているキツネたちが描かれているはずだった。これまでの洗濯で全体的に色が薄くなってきたとは言え、一匹のキツネが、まるまる消えてしまったなんてことはない。初めての事態に、これ以上使って残っているキツネたちも褪せて見えなくなってしまうのは嫌だと、桜木はその夜から、タオルを使わなくなった。畳んで大事に取っておく。しばらくは長年使っていたタオルが手元にないことが寂しかったが、高校生活が始まれば、バスケに出会
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    かいこう

    DONE最高のバレンタイン/花流
    14でバレンタインだなってなったけど、たくさんのチョコをもらうるかわに嫉妬を爆発させて暴れるはなみち、を回避しようとして中途半端
    最高のバレンタイン 恋人がいると公言していようが、流川のバレンタインは盛況だった。本人はむっつりと面白くなさを前面に出して靴箱に入れられているチョコレートをスポーツバッグに詰めている。朝練を終え、いつもなら教室に上がる時には素通りする玄関で、中に入れられたプレゼントのせいで閉まらないロッカーから中身が落ちてくる前に片づけを始める流川を待つために、桜木も玄関に立っていた。色も形も様々なチョコレートの箱を、流川は、もう何度もこういうことをしてきたと分かる手つきでバッグへ放り込む。去年の秋の終わりからつき合い始めた男の横顔を桜木は見やった。桜木から告白してつき合うようになって、いいけど、と交際を了承したものの、果たしてこいつはバスケ以外の交流はできるのかと危ぶんだ桜木の予想に反して、一緒に登下校したいと言ってみれば頷いてくれたり、帰り道でまだ別れたくねーと呟かれたり、バスケ同様、流川は恋人としても、最高で、流川と恋人になってからというもの、桜木の心はぎゅんぎゅんと甘く満たされている。廊下の奥や背後の階段の上から、朝練の最中にチョコレートを入れたのだろう生徒たちの忍び笑いや囁き声が聞こえてきて、ぐるりと首を捻って視線を巡らせる桜木の足元で、流川がため息をつきながら、スポーツバッグから紙袋を取り出した。最初からバッグじゃなくてそっちに入れりゃよかったんじゃねぇの。流川の杜撰さやものぐさに対して呆れたが、口には出さなかった。
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