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    かいこう

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    かいこう

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    袋の中の飴/花流
    参加しました!
    #백호태웅_100분
    #花流全力_100分
    テーマ『キャンディ』
    花流の日まで後17日~

    #花流
    flowerFlow
    #花流全力_100分

    袋の中の飴 秋晴れの空に覆われた屋上で昼食を食べ終えると、手持無沙汰になってしまい、桜木は何も考えずに制服のズボンのポケットに手を入れれば指先に当たるものがある。ああ、と思い出した。桜木が自身のポケットから、個包装された飴の大袋を取り出す。昨日の部活の帰りに寄ったコンビニで買ったのだ。買うつもりはなく…コンビニに寄る予定もなかったのに。二つ折りにしていた袋をがさがさと伸ばして、一つ取り出して口に入れた。飴は全部で二十個入っている。昨日と合わせて二つ目の飴を舌で転がしつつ、空を見上げた。あー…まずい。昨日もそう思ったのに、また食べてしまった。桜木はぎゅっと顔を顰める。喉に優しい何たら成分が含まれていて…パッケージに印字されているとおり、確かに喉にはいいようで、今朝の朝練でも、声はよく出た。だが肝心なことは言えない。いやだってまだ早いし…口の中の苦味が、帰宅してからいじいじと袋の中の飴を数えた己と重なった。じわじわと顔や首が熱くなってきて、飴のまずさを忘れる。
    「何食ってる」
     隣から声をかけられ、思わず飴を呑み込みそうになってむせた。
    「汚ぇ」
    「だっ誰のせいだと思ってやがる」
    「あ?」
    「いやっ、違ぇ、何でもねぇ、あ、あ、飴だよ、食うかっ?」
    「食う」
     慌てているせいで口がつるつると滑る。やっぱ飴はやらんと桜木が言う前に、流川が飴の袋にぐいっと手を突っ込んできた。全部取っていく気じゃねぇだろうな、と焦ったが、バスケットボールを難なく操る指先が飴を一つだけ抓んで出てくる。一個だけだったとしても、返してくれと言いたかった。だが桜木は言えない。ちまちまと個包装の袋を破る姿や、剥き出しにした飴を口に含む様子に意識が奪われてしまっていた。軽く伏せられた瞼、飴を挟んでいる指先の短く切られた爪、何の緊張もなく開かれる唇とその奥に見える歯列と舌に、桜木の体温はぐんぐんと上昇していく。これで飴の残りは十七個になった。一日に一つずつ食べていけば、流川とつき合うようになってからの日数が一ケ月を越える。それぐらい経てば、言ってもいいだろうか、お前とキスがしたいと、言ってもいい日はいつなんだ。誰かと初めてつき合ったから、いつならいいのか分からない。頭の中でいつか…と巡らせていた想像は気づいたらしていたし、ドラマも漫画も誰かの経験も、それぞれ違っていて、桜木はどうすればいいのか分からなかった。写真にこっそり口づけるのとは勝手が違う。そもそも流川の写真を持っていない…くれって言ったらくれっかな…今は写真の話ではなかった。ごちゃごちゃと落ち着かない思考に、桜木はため息をつく。バスケをしている時はよかった。山王戦で負傷した背中の治療を終えて部活に復帰し、癪に思いながら手本にと流川のプレイを見ている内に好きになってから、桜木の頭の中はわさわさと騒がしい。バスケバカに告白してどうする、でも気持ちは日々大きくなっていく、振られてスッキリ諦めたいと好意を告げて終わりかと思いきや、つき合ってもいいけど、と言われた。初めての恋人だと浮かれては、つき合うってどうすりゃいいんだと悩んでしまう。つき合う前と後で、表情も顔色も変わらない流川に対し、赤面したり緊張したり目が見られなかったり離れ難かったりと…桜木は忙しかった。やっと、居残りの後で二人きりで帰ったり、昼を一緒に食べたりすることに慣れつつあるところで…キスなんて。したいけど、まだ早いよなと思っては流川に言い難く、そのくせ唇にじっと見入ってしまい、はっと我に返っては慌てて目を逸らす…明らかに挙動不審だ。飴を買ったコンビニに入ったのも、そんな挙動不審の結果で、隣で前を向いて歩いていた流川がこっちを向く気配に、目が合えば己の欲望が見透かされそうで怖くて、咄嗟に明るい店内に飛び込む。逃げることが目的だった。欲望に対する疚しさで足運びが乱れ、偶然目に映った飴の袋を縋るように手に取る。そうそう、これを探していたんだよ、なんて誰も聞いていない言い訳をしつつ、会計を済ませて、店を出た。その間も、残りの道中も、流川の顔を見られない。どうにか、じゃあな、と挨拶だけはして、分かれ道からふらふらと歩いた。これまで想像してきたスマートな彼氏とは正反対な自身が情けなくて、涙ぐんで、飴の袋を開ける。慰めにしたかったのに、舐めた飴は桜木にはまずかった。捨ててやろうか。帰りついたアパートの自室でゴミ箱を見下ろして考えた。キスはレモンか苺の味、と根拠ない甘さを夢見ている自分にはそぐわない。迷って、捨てられなかった。勿体ない。苦い味が、平然とした態度の流川の横で、恋の懊悩に苛まれている自分のようだったからだ。卓袱台に中身を出して数えてみる。十九個あった。全部舐め終わる頃には、言っていいだろうか、キスしたいと、流川に言えるようになっているだろうか。
    「ぐっ」
     流川が咽た音に、桜木は考えごとから抜け出した。
    「大丈夫かよ」
    「…まじー…」
    「あ…っ」
    「こんなもん寄越しやがって…」
     口元に片手を宛がった流川に、眼光鋭く睨みつけられる。忘れていた、そうだった。悪いことをしたと思うと同時に、同じ飴を舐めて同じ感想ってことは味覚が合ってんだなと浮かれもする。
    「ぶふっ」
    「てめぇ…わざとか」
    「そういうつもりじゃねぇ、わざとじゃねぇし、俺もまずいと思ってら、でもおめーのその顔見てたら、ふ、くくくっ、はっ、はっはっはっ」
     自分がやったまずい飴に顰められている顔が可笑しいのは、喧嘩となれば殴り合うような相手だからだろうか。気づけば桜木は大きく口を開けて笑っていた。笑い声を重ねるごとに、頭上に広がる青空に似た清々しさが胸を過ぎる。
    「こんにゃろう」
    「うおっ、待て!」
     ぐっと制服の胸の辺りを鷲掴みにされて、桜木は笑いを引っ込めた。流川の目つきからして、殴られるだろう。恋人という立場にばかり気を取られて、忘れていた自分たちのもう一つの側面を思い出したようだった。笑いと共に流川への欲望が吐き出され、頭の中には何もない。自分たちはこれでいいんだ、という気持ちになった。狭かった視界がぱっと晴れて、眼前に迫る流川の顔を、よく見ていられる。これで流川みたいに、告白する以前の態度でいられるのだ。疚しさを抱えたり、挙動不審になったり、遅いか早いかという答えが出ない懊悩に一人囚われていることなく…桜木は反射的に流川の拳を止めようと、肩と手首をつかむ。そうしても止まらない流川に頭突きかと構えた。
    「んむっ?うぐ、う、んんんん!」
     だが、ひたいにがつんと衝撃は来ない。むぢゅっと唇を圧迫された。流川と自分の顔の位置からして、接触しているのは口同士…と思い至った次の瞬間、合わさった唇からぶーっと勢いよく息か唾が吐き出される。
    「なっ、何しやがる!俺は風船じゃねぇぞ!」
     もしかしなくてもキスじゃないのか、という驚きも流川の行動の前に霞んでいた。どういう意図があって、閉じた口と口がくっついたと思ったら息だの唾だのを吹きかけられることになる?
    「間違えた」
     そう言って制服の袖で流川が鼻の下から顎までを拭う。どうやら恋人とキスらしきことをした後でそれはないんじゃないかとショックを受けたいが、桜木の顔も流川の唾と呼気で濡れていたのでごしごしと制服で擦った。一体、何なんだよ。
    「人にまずい飴食わせて笑いやがるから返してやるつもりが」
     さっき、流川が吹いた息の強さで返された飴が喉に詰まるさまが頭に浮かんで桜木はゾッとする。
    「いやお前、やるにしたってやり方があんだろ」
    「やったことねーのにやり方なんか知らねー」
    「人の口に向かってぶっと吹いたりすんじゃなくてよ、こう、いっぺん口から出してだな…」
    「めんどくせー」
    「ものぐさ野郎…」
    「んなことしなくても口に入れたまんまでできる」
    「ハレンチキツネめ!」
    「てめーだってしてぇって思ってるくせに何言ってやがる」
     隠していたつもりの欲望をすっかり見抜かれていたと知って桜木の顔はかっと熱くなった。
    「そそそそんなことねぇっ」
    「人の口じろじろ見てた」
    「うう…」
    「だからしてやったのに感謝の言葉もねーのか」
    「あ、ありが…?いや、飴の話はどこ行ったんだよ」
    「ちっ」
     初めてのキスはレモンか苺の味で、きっとときめきに満ちていて、この天才がスマートにキツネにしてやる。想像では完璧だった。しかし実際は、流川の唇の感触もよく覚えておらず、唾を吹きかけられ、口の中にはまずい飴が転がっている。おまけにたった今、舌打ちされた。感謝の言葉って本気かよ。全然、これっぽっちも、嬉しくないしありがたくもないし…と言い切れないのが悔しかった。反面、何となく、泣きたい気持ちもある。
    「…おめーはどうだったんだ」
    「何が」
    「おれ、俺様とその…し、してぇとか、思ってたんかよ」
    「思ってなきゃしてねー」
    「そ、そうか」
    「やっぱ口で返すやつ、できねーのむかつくからもう一回する」
    「待て待て、お前な、情緒とか雰囲気とかあんだろうがっタイミングとか」
    「意味分かんねぇ」
    「俺ははなっ、いろいろ考えてたんだぞ、たっ確かにちゅうしたかったけどまだつき合って二週間なのに早ぇよなとか、だからこの飴が全部なくなってからだなぁ…」
    「全部っていくつあんだ」
    「二十…いや昨日一つ舐めて今日俺とおめーで二つだから、十七個…」
    「一ヶ月過ぎたらキスしてもいいんか」
    「知らねぇよっ、でも、そんぐらい経ったら、おめーにしてぇって言ってもいいかなっつーか、言えるようになってかなって…」
    「今言えば?」
     こっちは顔は熱いししどろもどろにしか話せねぇってのに…とあっさとり言ってのける流川の剛胆さが桜木は恨めしくなった。羨ましい。心臓がどっどっと速まって、飴のまずさがまた分からなくなった。
    「どあほうが言えねーなら残りの飴全部俺が食っててめーの口に入れてやる」
     何でそうなるんだよ。人の躊躇いを待たない早急さに腹が立った。流川から飴を口移しされる色っぽさにいきり立った腹がぐずぐずと融けそうになる。さっぱりした頭の中が、流川のせいでまたざわついていた。どうする?なんていくら考えても答えは出ない、悔しい、むかつく、だから、赤ら顔の眉間にぐっと力を入れると慣れた喧嘩の要領で黙ったまま流川の制服のつかんで引き寄せ、飴玉十七個分の葛藤や恥じらい、惑いを抱える己を蹴散らすように、あるいは内包するかのように、まずくて下手なキスでやり返す。
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    かいこう

    DONEタオル/花流
    花流の日まで後6日~
    タオル 自分の洗濯物を片づけるついでに、流川のシャツや下着類もしまってやろうと棚の引き出しを開けようとすればがたがたと引っかかる。ふぬっと強引に開けてやった。中の衣服は雑然としていて、これが開けにくかった原因かと、桜木は呆れる。
    「あいつはよぉ…」
     バスケ以外はずぼらなところがある男の引き出しの中身を、仕方がないなと整理してやることにした。ここのところ、遠征や取材で忙しかったのを知っている。甘やかしているな、と思いながら、それでも普段の生活で、不得手ながら家事に勤しむ姿に接しているので、まあいいか、と畳み直し、きれいに詰め始めた。
    「ぬ…?」
     引き出しの奥に古びたタオルが入れられている。見覚えのある薄れた色合いや洗濯を重ねて薄くなってしまった生地の具合に、目を瞬かせた。それは、桜木の親が桜木が生まれる前に赤ん坊の肌かけにと桜木のために買ったもので、赤ん坊の時分から、幼稚園、小学校、中学校と育つ中、ずっと桜木の手元にあったタオルである。おしゃぶりの代わりにタオルの角をよく吸っていたと言われたり、そのタオルがなければ、昼でも夜でも寝られないと泣き喚いたり…自身の記憶に残っているもの、いないもの、合わせても思い出がたくさん刻まれている桜木の大事なタオルだった。小学校を卒業する頃にはもう肌かけにはしておらず、代わりに枕カバーとして使っていたものの、高校入学を翌日に控えた夜、中学校での最後の失恋から立ち直れなくて、可愛い恋人なんてこの先現れないんじゃないか、もしいるなら顔が見てみたい、好きになった相手とつき合いたい…と、布団に入って枕を、大事なタオルを、べそべそと涙で濡らしていれば、視界の端で模様がひとつ、すっかり消えて元々のタオル地の色が露わになっていることに気づき、束の間失恋の辛さも忘れて、桜木は起き上がると慌ててタオルを確認する。白いタオルに淵をぼやかせた青空と、元気よく飛び跳ねているキツネたちが描かれているはずだった。これまでの洗濯で全体的に色が薄くなってきたとは言え、一匹のキツネが、まるまる消えてしまったなんてことはない。初めての事態に、これ以上使って残っているキツネたちも褪せて見えなくなってしまうのは嫌だと、桜木はその夜から、タオルを使わなくなった。畳んで大事に取っておく。しばらくは長年使っていたタオルが手元にないことが寂しかったが、高校生活が始まれば、バスケに出会
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    かいこう

    DONE最高のバレンタイン/花流
    14でバレンタインだなってなったけど、たくさんのチョコをもらうるかわに嫉妬を爆発させて暴れるはなみち、を回避しようとして中途半端
    最高のバレンタイン 恋人がいると公言していようが、流川のバレンタインは盛況だった。本人はむっつりと面白くなさを前面に出して靴箱に入れられているチョコレートをスポーツバッグに詰めている。朝練を終え、いつもなら教室に上がる時には素通りする玄関で、中に入れられたプレゼントのせいで閉まらないロッカーから中身が落ちてくる前に片づけを始める流川を待つために、桜木も玄関に立っていた。色も形も様々なチョコレートの箱を、流川は、もう何度もこういうことをしてきたと分かる手つきでバッグへ放り込む。去年の秋の終わりからつき合い始めた男の横顔を桜木は見やった。桜木から告白してつき合うようになって、いいけど、と交際を了承したものの、果たしてこいつはバスケ以外の交流はできるのかと危ぶんだ桜木の予想に反して、一緒に登下校したいと言ってみれば頷いてくれたり、帰り道でまだ別れたくねーと呟かれたり、バスケ同様、流川は恋人としても、最高で、流川と恋人になってからというもの、桜木の心はぎゅんぎゅんと甘く満たされている。廊下の奥や背後の階段の上から、朝練の最中にチョコレートを入れたのだろう生徒たちの忍び笑いや囁き声が聞こえてきて、ぐるりと首を捻って視線を巡らせる桜木の足元で、流川がため息をつきながら、スポーツバッグから紙袋を取り出した。最初からバッグじゃなくてそっちに入れりゃよかったんじゃねぇの。流川の杜撰さやものぐさに対して呆れたが、口には出さなかった。
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