水底に届かなかった星暗い海の底、ハロウィーンの祝祭の音が水面を伝って響き渡っていた。
パラダイスの都の楽し気な声に耳を傾けるかつての王は、その音に聞き入ると同時に、さらに遠くの場所から死を放つ異界の気配を感じ取っていた。
「あのお人好しめ…」
「誰の事?」
と独り言に返事をされ、首を持ち上げると、封印の檻の向こうに見知った顔がそこにはあった。
少し驚いた真王はまじまじと声の主を見つめた後、落胆の深いため息をついた。
「久しいな、ミッキー・マウス。随分雰囲気が変わったではないか。」
「そうかな? でも、以前より気分が良いんだ。なんだか解放されたみたいで。」
白と黒、あるいは紺色の混ざった、暗闇に漂う霞のような衣装を纏ったミッキーは嬉しそうに笑う。
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