Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    キヤ

    画像化文章と絵置き場
    https://www.pixiv.net/users/4495537

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 90

    キヤ

    ☆quiet follow

    パーグラ

    ##パーグラ

    気配が、する。

    自室で寝ていた僕は誰かが部屋に入ってきた気配に目を覚まし、その様子を窺っていた。昨夜は部屋に鍵を掛けるのをうっかり忘れてしまったのだろう。
    侵入者に殺意がないことはすぐに分かったし、扉に背を向けて眠っていた為寝たふりをしたまま気配を探る。
    気配は徐々に近寄ってきて僕のベッド脇まで来た。近くにあった腰掛けを持ってきて頭の側に座る音がして僕は息を飲んだ。
    「………」
    見つめられている。この空気は…僕の知っている、よく知っている人間の纏うもの。
    いやでもまさか?本当にその人なら、彼は僕が恋をしている相手。身体の向きを変え、愛しい彼の名を呼ぶ。

    「パーシヴァル…?」
    「…ッ!」

    やはりパーシヴァルだった、その手は今にも僕に触れようとしていたかのように伸ばされている。
    大好きな彼の突然の訪問に僕の心臓は期待も含めて(まだ告白もしていないのにも関わらず)高鳴ってしまった。
    平静を装い「どうしたの」と問い掛けるとパーシヴァルはびくりとし「すまん」と呟いた。
    「あっ、いや大丈夫だよ、大丈夫なんだけど…びっくりしたから、さ」
    「………」
    パーシヴァルは無言で僕の目を見つめ、伸ばされた手は僕の前髪にそっと触れる。

    今のパーシヴァルは手触りの良い素材で出来ている薄い夜着姿だ。片腕には自分で使っているのであろう枕を抱いている。わざわざ僕と一緒に眠る為に来たということ、なんだろうか?
    僕は少し考えたが彼を受け入れることにした。だって、薄い夜着のままで座って居たら寒いだろうから。

    そんな言い訳を自分にしながら彼に笑い掛ける。僕はただ彼に触れたいだけなのだ。

    「パーシヴァルほら、ここ来て。一緒に寝よ?」
    僕を見つめたままで黙り込んでしまったパーシヴァルを布団の中に誘う。パーシヴァルは目線を彷徨わせた後、素直に隣に潜り込んできた。
    狭いベッドなので僕が奥に詰めてパーシヴァルは空いたスペースに枕を置き、向かい合うように横になった。パーシヴァルが毛布と布団を掛け直し、二人でそれにくるまる。
    「………」
    お互いに掛ける言葉を探していた。
    暫くそのままで見つめ合う。狭いベッドなのでほぼ密着状態になり、自分の手をどこに置けばいいのかわからずにシーツをなんとなく握り締める。パーシヴァルはそんな僕の手に自分の手を乗せ、優しく握った。
    「…グラン」
    言葉と共にパーシヴァルの手が僕の頬に触れ、恐る恐るといった様子で撫でる。何かを決意するように目を閉じた後、僕の身体に腕を回しギュッと抱きしめた。
    「ぱー、し、っ」
    僕はいきなり近くなった距離に動揺して妙な声を上げてしまった。彼の露わになっている胸板に頬を押し付ける形になってしまい思わずゴクリと唾を飲み込む。直接感じるパーシヴァルの体温。外気に晒されていた為か少し冷たかった皮膚はすぐに温もりを取り戻す。
    僕からも彼の身体に腕を回し背をゆっくりと撫でると彼は安堵したように息を吐いた。
    心臓の音がやけに大きく聴こえる。これは僕のものか、それとも彼の。モゾモゾと彼の脚が動き僕の脚に絡められた。触れ合う爪先は酷く冷えていて、僕はその冷たさを受け入れようと脚を動かして彼の爪先を包んだ。
    「…お前は、暖かいな」
    パーシヴァルが呟き、僕の髪に顔を埋めるのがわかった。背に回された彼の手が僕の夜着を強く掴む。
    「グラン、俺にこうされるのは…嫌ではないか?」
    「え」
    そう問われて僕は少し身体を離して彼の顔を覗き込んだ。薄らと見える赤茶の瞳は不安げに揺れながら僕を見つめている。形の良い唇が再び何かを言おうと開かれ、そして閉じられた。こんな顔の彼は初めて見た。まるで、怯えた子どものような。
    「…嫌じゃないよ、嬉しいよ」
    「グラン」
    彼の瞳がぱちぱちと瞬き、潤んでゆく。今にも泣き出しそう、安心させてあげたいけれど、どうすればいいんだろう。落ち着かせるために赤い髪にそっと触れて撫でてやる。「大丈夫だよ」

    僕がパーシヴァルの恋人だったらもっと上手いやり方があったんだろうか。こんなに近くに居るのに上手く伝えられない事が酷く苦しい。
    目の前にあるパーシヴァルは涙を堪える為なのかぐっと唇を引き結んでいる。
    (触れたい)突如湧いてきた欲に自分で驚くが、決意する。
    僕は身体を少しだけ起こし、パーシヴァルの唇に唇を重ねた。触れた瞬間彼はピクリと震える。
    「グ、ラン」合わせた唇の隙間から名を呼ばれて胸が甘く痛み、パーシヴァルの頭をギュッと抱きしめる。彼はひくりとしゃくり上げてから僕の胸に顔を押し付け、その両腕は再び僕を強く抱き締めた。胸元にじわりと濡れた感触がして、彼が泣いているのがわかった。
    「グラン、グラン…」
    「大丈夫だよ、パーシヴァル」
    彼は僕を離すまいとするかのように腕に力を込め、震えながら涙を零し続ける。
    「おれの、名を、」涙声でそう請われて僕は応える。
    「うん、パーシヴァル、パーシヴァル」
    名を呼ぶと彼は再びしゃくり上げ、呻きと共に涙を流した。

    「パーシヴァル」呼びながら僕は彼の髪に口付けた。続けて額に、瞼に口付け、溢れた涙を舐めてやるとパーシヴァルは僅かに目を開け、その手が僕の頬を優しく包む。
    僕は訪れる瞬間の為に目を閉じる。

    「グラン」唇を重ねる、今度は彼の方から。触れるだけの口付けをしながらパーシヴァルの手は僕の身体に触れて回り、僕は触れられたところから流れ込んでくる熱にふるりと震えた。
    あぁ、と喘ぎに開かれた唇の隙間からパーシヴァルの舌が侵入してきて僕の舌を絡め取り、口内を犯していく。長くて厚い舌が口内をくまなく蹂躙し、舌を吸い、軽く噛まれて僕は未知の感覚に喘いだ。

    パーシヴァルが僕を求めている、僕を食べてしまおうと。嬉しい。目の奥が熱くなり、涙が零れる。

    「ん、んぅ…っ、…パーシヴァル、パーシ、ィ…ッ」
    「…、ん…グラン、ぐ、らん……っ」
    パーシヴァルが舌を絡めたままで僕の上に覆い被さってきて一瞬、目が合った。先程までの怯えた表情ではない、赤い瞳。その瞳の奥に未知の熱を見て僕は期待と同時に震える。
    荒く息をするパーシヴァルの手が僕の夜着を剥ぎ取り、僕も彼の首筋から露わになっている胸元へと手を這わせ、触れた。彼の下半身が僕の身体に押し付けられ変化をはっきりと伝えられた。そこは酷く熱く、大きくなっている。

    「グラン、お前が欲しい」
    言葉と共に剥き出しの首筋に口付けられ、吸われる。微かに走る痛み。続けて唇は僕の耳へと上がり耳たぶを軽く噛み舌を中に差し込まれる。パーシヴァルの荒い息遣いと水音が直接頭の中に響いてくる。腰に甘い疼きが走り、僕はパーシヴァルに縋り付いた。
    「パーシヴァルッ」
    パーシヴァルはそんな僕を見て僅かに目を細め

    そして。

    部屋の中には二人分の熱と、音があった。

    僕達は激しく抱き合いながら夢中でキスをした。
    お互いの存在を確かめ合うように何度も何度も抱き合い、僕の最奥には彼の熱が注がれ続けた。
    気持ち良くて何も、他に何も考えられなかった。
    もっとこの熱が欲しい。もっともっと、たくさん。
    貴方が安心できるまで、貴方の好きなように、僕を抱いて。

    パーシヴァル。

    貴方のことも、貴方の夢も全部全部僕が守るから。
    愛しい彼の髪にそっと指で触れながら僕は一人、誓った。
    Tap to full screen .Repost is prohibited

    recommended works