懺悔を待つ ——我々は死体を貪り生きている。
魔人は首を傾げた。
此処は一体何処だ、何故自分は此処に居るのか?
暗い淵の底で幾ら思考を捻ろうとしても、魔人の足りぬ頭では如何しようもない。
ある日、魔人は確実に消え去った。
もう何年も前の事。
魂の箱(入れ物)が背中からぼろぼろと崩れ去る瞬間に、魔人は黄金の戦士を見た。
己を護る為の箱を失った魂は、ゆったりと闇の底へと消えて行く。
——奴は敵であった。然し、輝ける光でもあった。
魔人はただ、闇の深い一点を見詰める。
四方を厚塗りの漆黒によって塗り潰された空間では、何処を見詰めようと同じ情景が広がっていく。
だが、魔人はその一点を飽きずに見つめ続けた。
その、一点を見詰めるという行為自体に、何かしらの意味が有ると本能が騒ぐ。
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