光のお隣さん/第三話 雨は昼過ぎまでという天気予報はぴたりと当たり、店に到着する頃には、傘は要らなくなっていた。つまり通勤時間の終わりを計ったみたいに止まれた訳で、その点について若干もんにゃりするような気持ちもないではないが、雨が上がったこと自体は、素直にありがたいと思う。呑み屋というのは晴天か土砂降りの下でこそ儲かる。月並みな雨は客足を家へと急がせてしまうばかりだ。
疎らに落ちる雫を避けて、軒下で傘を畳み終えると、ポケットから鍵を取り出し、がらがらとシャッターを上げていく。自分を含めた何者もいない、真っ暗でしんとした店内は、いつも一瞬、見たこともないような場所として、目に映る。灯りと賑わいの有無だけで、こうまでも変わるものなのかと。いわゆる接客業を選んだ自分は、たまに思うのだ。こうまでも変わるものだから、この職を選んだのだろうな、と。
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