無題ふと、解答用紙の名前記入欄を見て未だに互いの名前を知らないことに気付く。
自己採点だろうから、ここに名前を書く必要はない。それでも、気になって注視していると―不意に彼の手が右手に重ねられた。
ドクン、と心臓が跳ね上がる。重ねられた手から目が離せない。
「これで分かっても、面白くないだろ?」
楽しみは、最後まで取っておく主義なんでね。そう言われた後、手から二つの物が離れていく。
「でも、そうだな・・・明日の約束、忘れんなよ。」
何でもないように、彼は言葉を続けていた。横顔を盗み見ると、夕日が差し込んでいつもより赤い。
見てはいけない気がして、すぐに顔を逸らす。
「・・・ああ。」
僕の答えを聞くと、彼は足早に立ち去った。
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