間宵「拓海クンは希さんのことが好きなんだよね」
「……は?」
人も疎らになったファストフード店では、多少の大きい声でも簡単に掻き消される。予想外の言葉に心底驚いた顔をした拓海クンは、テーブルに広がった教科書から顔を上げてボクの目を見つめ返した。やっとこっちを向いたな、と少しばかりの優越感を抱えながら、読んでいた本に栞を挟み畳んだ。
「だから、ただの幼馴染なんだって何度も言ってるだろ」
「それにしては一緒に居すぎじゃない? 物心付いたときからご近所で学校も一緒、高校三年生になった今でも朝の登校から昼休み、家に帰って晩ご飯まで一緒なんでしょ。ボクにこうやって勉強を教わりに来るのは希さんがお母さんの手伝いで忙しい放課後だけってわけだ」
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