愛する貴方の地に足が届かない(プロローグ)視界の片隅に捉えた仕事中の恋人に、新一は珍しく足が止まった。
ちょうど休日で人通りが激しい道の真ん中で、突然立ち止まっては迷惑だろうと、すいすいと人を泳いで街路樹に背中を預ける。そして「ふむ」と、新一は顎に指を当て、いつもの推理のポーズをとった。
江戸川コナンから工藤新一へと戻り、それから直ぐに降谷から押せ押せでアピールされてから付き合って、既に五年。降谷と新一は未だ身体の繋がりの無い、プラトニックな交際だ。
始めは新一が未成年だから触れてくれないのかと思っていたが、新一が目出度く二十歳を迎えてもレストランでの豪華なディナーやプレゼントはあれど、そのままベッタベタにホテルで一夜を過ごす事も無く、普通に自宅へと送られて別れに軽いキス。アルコールを飲まなかった降谷は、颯爽と愛車を走らせて帰ってしまった。
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