花火/kksg露店をしばらく歩いたあと、俺たちは木陰のベンチに座ることにした。これから上がる花火をゆっくり見るためだ。
買った食べ物を口に運び、他愛のない話をしながら、カキツバタとその時をゆっくり待つ。
ふと会話が途切れ、次は何を話そうか、なんて考えているうちに、ベンチに置いた俺の手にカキツバタの指が触れてきた。
俺の手をなぞるようにして覆い被さってくる彼の手から、ひと際優しい温もりを感じる。
「花火もうすぐか?」
「うん、もうすぐ。」
カキツバタは手を覆いかぶせたまま、俺の指へ自分の指を絡ませる。
-ドォン!!-
大きい音が鳴り響いた。夜空に上がる鮮明な花火を二人で静かに眺めていく。
「すっげ…!迫力満点だねぃ。」
初めて見る花火に少し興奮気味のカキツバタを見て、誘って良かったと心から思った。俺は以前から、この自慢の祭りに彼を連れて来たいと思っていた。学年も違うし、リーグ部でしか会えない俺たちは、お互いの仲を深める機会に欠けていると感じていたからだ。
もっと俺のことを知って欲しい。
そして、俺のまだ知らないカキツバタを教えて欲しい。
その気持ちが今日のデートへと結び付けた。
「綺麗だな…。」
次々に上がる花火の芸術に、感嘆の息が漏れる。
毎年見てはいるけれど、今年は彼もいる特別な日だから感動も格別だ。この感動は、彼と付き合い始めた時の衝撃に似ているかもしれないな。
なんて、その頃に想いを馳せていたら、俺は自然と彼の肩に顔を寄せていた。
それに気付いたカキツバタは、黙って重ねる手に力を込める。
彼も同じ想いでいることを実感して、わや嬉しい。
最後にいちばん大きな花火が上がった。
色とりどりの花びらが光となって咲き誇る。
この打ち上げ花火のように、これから先もこの想いを美しく、大きく咲かせることが出来ますように。