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    北極星のなりそこない

    @polastrs

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    POIPOI 24

    落書き水麿SS 清磨君の書いた遺書と伝えないはずだった恋心とそれを読んだ水心子君の話 若干の刀剣破壊示唆有 ハピエンです

    #水麿
    mizumaro

    懺悔 親愛なる我が親友、水心子正秀へ
     この手紙を君が読む時、僕は既に折れている。僕が生きている内は封が開かないように術をかけておいたからね。
     これはいわゆる遺書というやつだ。そう、遺書。遺書を書く刀剣男士も多いって政府の研修で教えられた時、君は嫌そうな顔をしていたね。何があるか分からないし戦争だからいつ折れてもおかしくない、けど最初から折れる事前提で動くのはおかしいんじゃないかって憤っていたね。
     僕もその時は賛同したけど、時間が経つにつれて考えが変わってきたんだ。どんなに仲良くなっても言えない事はある。むしろ仲が良いからこそ言えない事もある。そんな思いを抱えたままじゃ体より心の方が先に折れるかもしれない。だから僕はこれを書いたんだ。君の隣で戦い続けるために。
     告白、というよりは懺悔かな。親友のそんな一面知りたくないって言うならこれは閉じて燃やしてほしい。そうじゃないなら、どうか読んでほしい。折れる前に僕の思いを言えなかった事を、書いて残さなくちゃ進めなかった僕の弱さを、君の心に傷を残したい僕の傲慢を許してほしい。
     さて、政府で体を得て君が相棒だって紹介されて、しばらくは愛想笑いで過ごしてたんだ。君は最初から気が合うしすぐ仲良くなったって思ってるかもしれないけど違って、相棒だから仲良く見える方がいいよね、その方が円滑に進むよねって合わせてたんだ。ごめんね。
     でも君の一生懸命さとか、曲げられない信念とか、可愛らしい一面とか、そういうのを知っていく内に僕は君を認めたんだ。ただの仕事の相棒だけじゃなくって一つの個として君を支えたい、見守りたいって思うようになった。いつ頃からだったかな、確か顕現して一ヶ月ぐらいしてからだったと思う。もっと早く素直になってればよかったのにね。
     政府でも本丸でも僕達はよく一緒に過ごしたね。訓練や勉学に励む事もあったし、万屋街に出かけたり、何でもない話をずっとしたり。とても楽しかったな。でもね水心子、同時に僕は友人だけじゃ済まない気持ちも抱いてたんだ。
     僕は君の事が好きだ。輝く緑の目が、芯の強い髪が、見た目の年の割にしっかりした手が、小柄でも逞しい体が、理想を目指す一生懸命さが、必死に抑えていた好奇心の強さが、新々刀の祖として胸を張り続けてるのに僕の前では時々素直な気持ちをこぼす弱さが、刀剣男士として困難にまっすぐ立ち向かう強さが、君の全てが愛おしい。
     僕は君に恋をしている。人には言えないような欲も抱いてたよ。でも親友にそんな事求められても困るだろ? 水心子は優しいし流されやすいから応えてくれたかもしれないけど、無理強いしてまで手に入れた関係なんて虚しいだけだからね。
     でも気持ちは止められない。毎日好きだって惚れ直して、君を恋しい気持ちは強くなる一方で、出来れば墓まで持って行きたい秘密なのに爆発したら困るわけだ。
     だからこれを書く事にしたんだ。何かに書いておけば心が軽くなると思ってね。実際正解だよ。書いている途中だけど大分呼吸が楽になったから。
     僕が折れた後、きっと君は親友として遺品整理をしてくれるだろう。そして君宛のこの封筒を見つけて中を見てくれるだろう。君はそういう誠実な奴だって僕は信じている。同時に僕は術が解けない事を願っている。君の親友として最後まで共に戦い抜きたいと思っている。
     君の親友でいたいくせに触れられたくて繋がりたくて眠れない夜を過ごしている僕を許してくれ。それでも直接言えない臆病さを許してくれ。言わないでいようと決めたのに遺書として恋文をしたためずにはいられないこの思いを許してくれ。これを読んだ君が折れた僕を一生忘れられないだろうと思うと嬉しくなる僕の傲慢を許してくれ。その全てを伝えないよう飲み込もうとしている僕を許してくれ。
     僕の愛しい水心子。僕の懺悔を読んでくれてありがとう。君は僕の光で希望で、戦うだけじゃない心をくれた唯一無二の存在だった。君が本懐を遂げ、折れぬまま最後の日を迎える事を願っている。
     君の親友、源清麿より

    ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

     ぼんやりと目を開ける。寝起き特有の意識の混濁にゆっくり瞬きをする事数回、見上げている天井が自室ではなく手入れ部屋のものであると清麿は気付いた。
     回らない頭で記憶を探る。確か酷く運の悪い出陣だった。検非違使に連続で当たって次々に大きな怪我を負った。撤退もままならず、どうにかラインを確保したところに槍が突っ込んできた。標的となった水心子を守るために咄嗟に彼を突き飛ばした清麿は代わりに貫かれて致命傷を――
    (……負ってないな。ぎりぎり踏みとどまれたのかな)
     どうやら首の皮一枚繋がったらしい。全身が重く怠くて動こうとするとすぐ痛むが折れてはいない。親友に叱られる未来は避けられなさそうだが「自分を庇って親友が折れた」というトラウマは植え付けずに済んだようだ。
     このまま手入れ完了まで寝ていた方がいいのだろうがどうにも喉が渇いた。痛む体を強引に起こして近くに置いてあった水瓶に手を伸ばす。コップに水を移しているとガラリと引き戸が開いた。
    「水心子」
     手入れ部屋にやってきたのは水心子だった。庇った甲斐あって軽傷で済んだのか内番着姿のどこにも怪我は見当たらない。やはりというべきか、予想通りムスッと不機嫌そうにしている彼に微笑みを向けた。
    「無事で良かった」
    「……清麿。私は怒っている」
    「君を庇った事かな。ごめんね、あの時は必死で……」
    「それもだが、そうではない」
    「うん?」
     思い返せばあの時の水心子は部隊の中でも軽傷で、一撃食らっても即死には至らなかっただろう。対して清麿はもう一太刀で落ちるかもしれないところまで傷を負っていた。それなのに庇うなんてと怒られるのかと思いきや、今回の主題は違うらしい。
    「これだ」
    「ッ――げほっ、ごほっ!?」
     何かと思いながら水に口を付けたところに封筒を突きつけられて清麿は盛大にむせる事になった。胸を叩いてせき込んで、改めてコップを煽って強引に喉を落ち着かせる。大きく息をついた清麿は再度封筒を見た。
     スミレの花が印刷された封筒の表面には「水心子正秀へ」と己の字で書いてある。その上、中の手紙が出されて重ねられていた。――間違いなくこの本丸に来て一年ほど経った頃に清麿がしたためた遺書だった。
     そんなに厳重に隠していたわけではない。清麿の文机の一番上の引き出しに入れていたから少し漁れば発見出来る物だ。水心子がうっかり見つける可能性はあった。だが封が開いているとなれば話は別だ。
     永遠に伝えずにいようと書いた遺書だから生前読まれては困ると、清麿が折れた後でないと封を開けられない術をかけておいた。この水心子は術を苦手としているからハッキングも出来ないと踏んでいたのにどうして中身が出ているのか。混乱する清麿の前に水心子はどっかりとあぐらをかいた。
    「どうして中が出ているのかと言いたげな目をしているな」
    「――だ、だって、ちゃんと術かけたんだよ。開けられないよねって何回も確かめたのに、何で……」
     清麿は生きている。折れていない。であれば条件未達成で封は閉じたままのはずだ。水心子は眉間の皺を深くした。
    「お守りだ」
    「お守り……え、お守り?」
    「その様子だとすっかり忘れていたんだな。我が主が身銭を切って皆に用意してくれたというのに」
    「……あ、あー……そういえば……」
     時間遡行軍による本丸への大規模攻撃――大侵寇と呼ばれる大戦の後、誰一人欠けたくないと審神者は貯金を大幅に崩して所属する刀剣男士全員にお守りを渡していた。刀剣男士の死を一度だけ肩代わりしてくれるそれの活躍の機会は全く訪れなかった。そもそも安全第一で早めに撤退させられる事も多いのだ。結果、清麿は主の厚意だというのにお守りの存在をすっかり忘れていた。
    「……そっか。お守りで……え、でもそれなら僕折れてないから……条件達成してないはず……?」
    「折れたんだよ。お守りは肩代わりではなく緊急修復だからな」
    「そ、そうなんだ……」
     どうやら清麿が仕様を勘違いしていたらしい。そういえば一緒に渡された説明書を読まなかった覚えもある。興味がない事に対しては誰だってそういうものだろう。どうして封が開いているのかについては解決したがまた別の問題が残っていた。
    「……あの、さ、水心子……中身、読んだの……?」
    「ああ」
     即座に頷かれてさぁっと青ざめる。決して言わないと心に決めて恋心を書いた遺書だ。読まれる時は清麿はこの世にいない算段だった。それなのに思惑通り行かず、水心子に知られてしまった。清麿は膝の上でぎゅっと手を握った。
    「……ご、めん。忘れて」
    「何故だ」
    「だって迷惑だろ。だから読まれないようにって術かけたのに……」
     日々大きく重くなる恋心を隠しておくための遺書だった。実際書いてからは前よりも穏やかな気持ちでいられたのだ。俯いた清麿に水心子は大きなため息をついた。呆れられるまではいい。気持ちを知られて親友のポジションまで失えば清麿は生きていけない。いっそ自刃しようかと考え始めた清麿の顎を掴まれ、強引に上向かされた。眼前に迫った水心子の目は怒りに満ちていて、清麿は身を硬くした。
    「源清麿。私は怒っている。君が私に恋心を伝えずあまつさえ言い逃げしようとしていた事に対してだ」
    「だっ、だって、言えないよ。言えないけど、抱えたままだと戦えなくなるかもって思って、って書いてあるだろ!?」
     遺書を読んだのなら何故書こうと思ったのか、その理由だって知っているはずだ。乱れる清麿の胸中を分かっているのかいないのか、水心子は鼻先が触れ合いそうな距離で続けた。
    「それほど強く想っていた癖に言わず仕舞いで逃げるつもりだったのか!?」
    「折れるつもりはなかったんだよ! そう書いただろ!」
    「折れたじゃないか! 私を庇って折れた上にこんなもの読まされた日には一生どころか来世まで引きずるトラウマになるが!? 目の前で槍が清麿の体を貫いた時の私の気持ちが分かるか!」
    「だって水心子が折れるぐらいなら僕が折れた方が百億倍マシだよ! そのくらい大事なんだから……!」
    「私だって同じだ! 親友をむざむざ敵に折らせてたまるか!」
     親友。その単語がこれほど心を抉った事もない。愛想笑いの仮面を被るのは得意なはずなのにまっすぐに感情をぶつけてくる水心子相手ではままならなくて、清麿は大粒の涙をこぼしていた。
    「泣けば済むと思ったか?」
    「……おも、ってないよ。思ってないけど……っ! 水心子にとって僕は親友なんだろ、だから言えないって思ったのに! 知られないようにって頑張ったのに! いいじゃないか、心に傷を残して一生忘れられたくないって、叶わない恋ならそんな夢ぐらい見させてよ!!」
     睨みつけてくる水心子にしゃくりあげながら慟哭をぶつける。傲慢だと自分でも分かっていて、それでも書いた遺書なのだ。何も見なかった事にして引き出しに戻してくれれば良かったのにと顎を掴む水心子の手を強く払った。既存の傷よりもぶつかった手の甲の方がずっと痛かった。
    「もういいでしょ……独りにさせてよ。水心子、お願いだから……」
     心も体も痛い。拾った命を捨ててしまいたい。それが許されないなら記憶封印の術でも何でも駆使して恋心を忘れ親友に戻りたい。溢れ続ける涙を袖口で拭っていると水心子の手が後頭部を掴んできた。
    「ぇわ――ッ」
     この期に及んで何かと問う前に口が塞がれる。重なった体温と肌にかかる吐息、視界を埋める翠玉に思考がフリーズする。永遠かと思うほど長い数秒の後に唇が離れる頃には清麿の涙は驚きですっかり引っ込んでいた。代わりに頬がとんでもなく赤くなっていると鏡を見ずとも分かった。
    「す、すす、水心子、えっ、水心子、今、今何……っ!?」
    「舐めるな、源清麿。親友の恋情一つ受け止められない私だと思ったか。……と、いうか、だ」
     水心子はため息をついて清麿の顔に両手を添えてきた。いつもは水心子の方が温かいのに今は逆転している。何をされるのかと混乱する清麿の頬を水心子はむにぃっと引っ張ってきた。
    「ひにゃっ」
    「何でまるで伝わっていないんだ!? 定期的に一緒に万屋街に出掛けて! 祭りの日も他の誘いを断って清麿と過ごし! 年末のビンゴ大会で当てた温泉旅行も清麿と行ったのに! デートだって浮かれていたのは私だけだったのか!?」
    「えっ、え、いひゃ、はたゃから見ひゃらデートかもって思ってひゃけど……えっ、えっ!?」
     痛くはないが頬を引っ張られているせいで明瞭に話せない。それに浴びせられる怒声の内容は衝撃的なもので先ほどとは違った混乱を引き起こしてくる。
    「いつも隠そうとしてる私の感情を読み取ってくれるのにこれは分からなかったのか!?」
    「わ、分かんひゃい……」
    「どうして肝心なところで節穴なんだ……! そもそも私が清磨の気持ちに気付いてない事前提なのがおかしい! 贈ったピアスを眺めては蕩けるように微笑んだり、声色が他の者に対してと私とで明らかに違ったり、手を握ればはにかんだり、気付かないとでも思ったのか!? 両想いだからじっくり仲を深めて、清磨も同じように思っているからゆっくりでいいんだろうなと思ったのに全く気付いてなかったとは思わなかった!!」
     一気に怒鳴って酸素が足りなくなったのか、水心子はぜえぜえと肩で息をした。もし逃げるならこのタイミングだったろうが清磨は浴びせられた言葉に思考も視界もチカチカとして動けなかった。何度か深呼吸をした水心子は伸ばしていた頬を掌で包んで、改めて清磨を正面から見据えてきた。
    「手紙で何度も許してほしいと書いていたな。絶対に許さないからな」
    「ぅ……だ、駄目かな……恥ずかしいから読んだ事含めて忘れてほしいんだけど……」
    「駄目だ」
     キッパリと断られて喉の奥で唸る。諦念を抱えて書いた遺書は今や清磨の鈍感さを象徴する物になっていて、早く破棄したいし恥ずかしくて仕方なかった。
    「清磨が貫かれてからずっと生きた心地がしなかった上にこんな遺書まで読んで、本当に怒っているんだぞ。一生かけて償ってもらうからな」
    「ええっと、それって……」
    「私のそばにいろ。この本丸が閉じる最後の日までだ。分かったな?」
     どうやら清磨を手放す気はないらしい。酷く怒っているのに聞かされる言葉は夢のような内容ばかりで頭の中が沸騰しそうだ。せめて俯きたいのに頬をしっかり両手で固定されては叶わず、清磨は大人しく目を閉じて重ねられた唇を受け入れた。
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    MEMO妄想小説その1

    監督生が帰っていった(?)後の話。
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    このお話はフロイドが出てくるシーンのみ抜き出しております。
    not監督生 好き勝手に書いていますので何でも許せる方

    一部修正しました。
    「あれ?何かちっちゃいのがいる」

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    興味を覚え側まで行くとサバナクロー寮の体操服を来ている。しかし、サイズが合っていないのか大きくて不恰好だ。

    「こんな所で何やってんの?うちの学園の体操服着てるみたいだけど…稚魚ちゃんだよね」

    話しかけられた相手は、突然自分の目の前に現れた壁に驚いて思わず一歩体を引いた。

    「…人と待ち合わせをしているんです。今日からこの植物園で働くことになったので。
    体操服は訳あって借りているだけです」

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    「働くって…まだ子供でしょ?」

    相手はフロイドを見上げたまま首をすくめた。

    「子供かもしれませんが16です」
    「まじ〜?オレより1コ下なだけなの?」

    さらに顔を近づけるので困った表情で相手もさらに首と体をすくめる。
    そんな様子を見てフロイドは可笑しそうに笑った。

    「あはっ。身体縮めてヤドカリみたい。ヤドカリちゃんだねー」
    「私はシキです」

    そうは言ったもののフロイドは聞いてや 878