医務室にいる夏の暑さがようやく和らぎ始めた黄昏時、忍術学園の医務室は夕暮れのオレンジ色の光に染まっていた。
窓の外ではひぐらしの声が響き、時折裏山から吹き下ろす風が髪を揺らした。
今日、保健委員会の当番だった僕は、医務室内の薬の整理をしながら、同じく当番の伏木蔵と話をしていた。
「伊作先輩、実は今度ろ組のみんなと百物語をするんですよぉ? もし良かったら何かゾクッとするようなスリル〜なお話を教えてくれませんかぁ?」
煎じた薬や乾燥させた薬草を挟んだ油紙を丁寧に片付けながら、伏木蔵が目をキラキラさせて言う。
伏木蔵の言う「ろ組」とは、一年ろ組の日陰ぼっこが好きな生徒達だ。
確かに百物語にはぴったりの面子だなと思いながら、僕は少し考え込んだ。
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