本当にあった怖い話忍術学園の医務室は、夏の午後の柔らかな光に照らされ、乾燥させた薬草の匂いがほのかに漂っていた。
匂いの元となった薬草が乗った干し籠から、保健委員会の良い子達が慣れた手つきで選り分け、手が空いた子は包帯の巻き直しに勤しむ中、私は忙しい任務の合間をぬってふらりと立ち寄った。
伊作くんが恋人になってから、この医務室を訪れる機会が増えた。
いや、正確には少しでもいいから恋人の顔を見たくて、足が自然と向いてしまうのだ。
こうして付き合う前は、伊作くんからの熱烈な告白を断り、迫られても逃げ続けた身としては現金な限りだが、手を取ったからには伊作くんとの関係を心から大切にする事にしたのだ。
しかし今日はそんな穏やかな気分を少し裏切る展開になった。
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