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    聖龍@どや乳

    曰く、どや乳、飯テロリスト、顔面美人、よく見かける乳、コミュ力凸、書痴、TLのオカン、金の亡者、民事裁判二回勝訴、刑事事件を示談解決、創作系雑食腐女子(一次実体験エッセイ、二次🥷🥚雑伊固定他CP雑多)でアイコンは自乳な現在41歳な垢!RT注意🔪AI学習禁止。支部、note、各種SNS→ 
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    聖龍@どや乳

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    RKRN怪談webオンリー「忍夜百物語」で、コメントやリアクションたくさん下さってありがとうございます。
    嬉しすぎて仕事終わりにテンション上がって、短篇書きました。

    逢魔が時とか、山の怪異とか、そう言う話です。

    #微ホラー
    micro-horror
    #忍夜百物語
    #RKRN怪談webオンリー
    #腐向け
    Rot
    #雑伊

    呼び声夏も終わりに近付き、木々が黄昏の茜色に染まる。
    昨今、組頭として戦場や任務に追われる日々だが、何とか時間を捻出すると、恋仲となった伊作くんの顔を見に、忍術学園に立ち寄った。
    だが私が医務室に着くと、伏木蔵くん達保健委員会の後輩から、伊作くんが一人で裏裏裏山に薬草摘みに出かけたと聞かされた。

    聞けば伊作くんの不運体質のせいで、保健委員会の日干し中の薬草が強風に飛ばされ、予算が足りず買い直せない為、自ら薬草を採りに行ったらしい。
    まあ、伊作くんらしいねぇ。
    自分の不運を背負い込んで、猪突猛進で解決しようとするその姿に感心する反面、心配も募る。
    あの子の不運は、時にただのドジでは済まない危険を招くからだ。

    「そうか、じゃあ私も手伝いに行こうかな?」

    保健委員会の良い子達にそう告げると、私は一路裏裏裏山へと向かった。
    山道を駆け抜け裏裏裏山に着くと、木々の間から虫の声が響き、夕暮れの空気が肌を冷やす。
    山道を辿りながら伊作くんの姿を探していると、遠くで見慣れた伊作くんの背負籠が見えた。
    だが、どうにも様子がおかしい。
    伊作くんが何もない斜面に向かって、一直線に走っているのだ。

    「伊作くん!」

    こちらが声をかけても反応がない。
    伊作くんが向かう先には、岩肌に開いた大きな裂け目が見える。
    心臓が締め付けられるような予感に、私は力の限り追いかけた。
    すると、木々の陰から不気味な声が響いた。

    「伊作くん…」

    その声は私のものに似ているのに、どこか粘つくような、冷たい響きを持っていた。

    物の怪だ。

    山の古い霊が、恰好の獲物を見つけて呼び寄せたのか、見れば伊作くんは裂け目の縁で立ち止まり、怪訝な顔で遠くを見ていた。
    視線の先を見れば、木々の間にぼんやりと私の姿に似た影が揺れる。
    だがその顔は黒く塗りつぶされ、まるで闇そのものだ。


    「危ない伊作くん!!」


    咄嗟に私が叫んだ瞬間、伊作くんが裂け目の縁で足を踏み外し、真逆さまに滑落していく姿が見えた。
    物の怪が、今度は嘲るような声で「伊作くん」と発した。
    私は全力で地面を蹴ると、一足で裂け目に到着し、滑落しようとする伊作くんに手を伸ばした。

    「伊作くん!!」

    私が声を掛けると、ここでようやく伊作くんが私を見た。

    「雑渡さん!!」

    落ちて行く伊作くんが必死に手を伸ばし、伸ばしと私の手を取る。
    私は力を込めて彼を抱き寄せると、そのまま近くの岩肌を蹴り上げ、安全な場所に着地した。
    時間にして数刻の出来事だったが、私の心臓はまだ激しく鳴っている。


    「心配させないでよ伊作くん…間に合わないかと思ったよ…」


    腕の中の伊作くん、確かめるようにぎゅっと抱き締めながら、私はそう言った。
    最初、伊作くんの体は小さく震えていたが、暫くすると、私の腕の中で安堵の息をついた。


    「ご心配をおかけしました…」


    その優しい声と温もりに、私の緊張がようやく解ける。
    そこで伊作くんが事の顛末を話し始めた。
    薬草を摘んでいると、滅多にお目にかかれない珍しい薬草を見つけ、そのまま浮足立って山奥に入り、気が付けば黄昏時になっていたそうだ。
    そこで不意に、私の声がして、目をやると私がいて「伊作くん」と呼びかけてきたそうだ。
    何事かと急いで駆け寄ったが、距離が縮まらず、怪訝に思って立ち止まった所で、黒い影(物の怪)だと気づいたが、時既に遅く、足を滑らせ裂け目に落ちたのだと言う。


    「まあ山は古来物の怪や神仏が住まう場所だからねぇ…そう言う事もあるかもね」


    私は納得しつつ、伊作くんが無事だった事に、心から安堵した。
    だがしかし、いくら私の声や姿を模されたからと言って、よく確認せずに危険に飛び込むのは心配で堪らない。
    世の中には物の怪に留まらず、変装の名人だってごまんといるのだ。


    「私を心配しての行動だと思うと咎められないけれど、今度からは気をつけるんだよ」


    そう私が念を押して言うと「はい…気をつけます」と伊作くんが素直に頷いた。
    腕の中で落ち込む顔を一撫ですると、夕闇の中で再度伊作くんを抱き締めた。
    腕の中の温かな温もりを堪能しながら、ふと周囲を見れば、もうすっかり日が暮れていた。


    「もう遅いし、このまま送るよ?」


    そう言うと、私は彼の手を取った。
    すると伊作くんははにかむような笑顔で「ありがとうございます」と言った。
    その笑顔に笑い返しながら私達は歩き出した。


    「荷物はそれだけ?少ないね?」


    伊作くんの背負籠に目をやると、伊作くんが怪訝な顔をした。


    「え?少ないですか?」


    そう言いながら伊作くんは背中の背負籠を確認すると、愕然する。
    どうやら先程の滑落の衝撃で、折角集めた薬草が半分以下に目減りしたそうだ。


    「ふ、不運だ……」


    涙目になる伊作くんに、私は思わず吹き出した。


    「ふはははは…まあ物の怪に絡まれて、尚且つあんな滑落にあっても無傷だったんだし、いいじゃないか」
    「よくないですよ〜何の為にここ迄遠出したのか…」


    悔しがる伊作くんに、私は提案した。


    「ごめんごめん。わかった。今度又、私も手伝って薬草を摘みにこよう?」
    「え?そんな、いいんですか?」


    伊作くんが途端に色めき立つ。
    その反応があまりにも純粋で、私は又笑った。


    「お前から目を離していると、不安でしょうがないからね…?」
    「もう!」


    頬を膨らます伊作くんを見て、私は又笑った。
    私は拗ねる伊作くんを宥めながら、彼の手を取り、二人で暗い夜の山を下り始めた。
    繋がれた手から伝わる温もりで、暗い夜道でも、私の心は温かく満たされた。

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