アイ光守護天節2023「てっきり、狼男の仮装をすると思ったのに……」
「少々趣向を変えてみようと思ってね」
「その結果が、吸血鬼なの?」
問いかけたハツナは戸惑った表情でアイメリクを見上げている。確かに、あの流れなら狼男の仮装をすると思われていても仕方がないか――そう考えながら、アイメリクはハツナの頬をするりと撫でた。
赤ずきんを被った少女がお使いに出たところ、母親の言いつけを守らず花畑に寄り道をした結果、狼男に騙されて食べられてしまう。そんな昔ばなしが、黒衣森には伝わっているのだという。ハツナからその話を聞いたアイメリクは、守護天節の仮装にちょうどいいのではないかと提案した。提案と言えば聞こえはいいが、愛しい少女の赤ずきん姿が見たいという下心以外、何も持ち合わせていなかったが、ハツナは「いいアイデアですね」と賛同し、今日を迎えたのである。
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