名を記す(ワンライ)ダークネイビーが広がる空に、点々と白銀の星が浮かぶ時間。
自宅の敷地から少し離れた草原。そこに仰向けとなり、夜の天体スクリーンを見上げる。
ロゼッタと出会ってから、彼の中で晴れの夜空を眺める事が一つの習慣のようになっていた。趣味、なんて大層なものではないが。
こうしていると、気軽に会える距離ではない彼女と少しでも寄り添っていられる気がした。
一方的な片思い。ただのパーティー仲間。悪党と姫。ある意味、銀河より果てしない距離。埋め方を知らないその間柄に、いつか決着は付くのだろうか。
片手を上げて人差し指を伸ばす。その細い指をなぞるように動かし、星と星を結んで彼女の名前を記した。
“ロゼッタ”という呼び慣れた呼称ではない。
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