その傷は君が生きてきた証で、「顔色が悪いね、大丈夫かい」
唐沢がそう聞いた相手は、三輪隊の隊長を務めている三輪である。普段からお世辞にも健康的とは言えない顔色をしている子どもは、今日は一層顔色が悪かった。思わず唐沢が声をかけてしまうくらいに。
声をかけられてようやく唐沢の存在に気づいたらしい三輪は、ゆっくりと二度瞬きをするとはい、と小さく答えた。その後に「大丈夫です」と続ける。
明らかに嘘だとわかるそれに唐沢は小さく笑ってしまう。「大丈夫か」と聞かれても「大丈夫ではない」と答えられる人間はそれほど多くはないとはいえ、嘘を吐くならもう少し取り繕うべきだと唐沢は思っている。
いつもは冬の空気のように冷たい雰囲気を纏わせている三輪だが、今はそれもない。むしろ触れると消えてしまいそうな弱々しさを感じる。
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