「そういえば前ヤリ一口-VIっていう寒波に覆われた星に行ったことがあるんだけど」
草むらで寝そべっていた僕の愛しい相棒……穹は、僕を見つけるやいなや、いきなり話しかけてきた。
「そこで博物館の経営を任されたことがあるんだ。」
「えっ、相棒が…?」
「ファイちゃん、なんだその反応は」
僕のリアクションが気に食わなかったのか、穹は頬を膨らまし、じっとりとした目でそれは可愛らしく睨んでくる。
「あはは、ごめんごめん。相棒が経営をしている姿がどうにも想像出来なくて。」
「ひどい!俺結構そういうの任されてきたんだぞ!」
「えっ、本当かい…?」
「だからなんだその反応!!」
穹はやにわに立ち上がると、僕の肩辺りをポコポコと叩いてくる。どうやらそれが穹の拗ねた気持ちを最大限表した行動らしい。
「いてて…ふふ、ごめんってば、"穹"。」
「おっ…まえさぁ、いきなり名前で呼んでくるなよ…」
そう言う穹の伏せた顔。
髪の毛で顔のほとんどが隠れてしまっていても、真っ赤になっているのが容易に想像できるものだ。
……しかし、まさかこうもいじらしい反応をされるとは思わなかった。
(ああ、駄目だ。)
頬がじんわりと熱を帯びていくのが分かる。穹も、今、僕と同じ顔をしているのだろうか。
(見たい。)
……そんな邪な考えを抱いたせいで、沈黙の間が生まれてしまった。これはどうしたものか…弁論大会で10連覇を果たした僕の功績がいとも簡単に崩れ去ってしまう!
きっと皆は知らないだろうが、こういう時の穹は、まるで覚醒したかのように僕を言い負かしてくるのだ。そう、その姿はまるで___
「どうした、ファイちゃん?自分から仕掛けたくせに、赤くなってる耳が隠しきれてないぞ〜笑」
___小悪魔だ。
「あれ?笑 図星か?ふふ、"ふぁいのん"は可愛いな。」
「…君、今のわざとだろ。」
「何のことかなー。」
「やり返すだなんて大人気ない!」
「俺は永遠に子供だ!!」
気が付いたらくだらない言い合いが始まっていて、それがどうしようもなく幸せで、愛おしくて、…失いたくなくて、笑った。
「は〜、ファイノンのせいで疲れた!」
「ちょっと待った、"疲れたけど楽しいひと時でもあった"の方が近い、そうだろう?」
「……なんか…ファイちゃんめちゃくちゃ自信ついたな?」
「穹のおかげだよ」
「……はぁ……」
「どうしたんだい?」
「大人気ないのはどっちだか……」