転生(さ)しす私は幼い頃のある時、本来ならば持たないはずの記憶を得た。
「ねぇ、母さん」
「うん?どうしたの、すぐる」
此方の顔を覗き込んだ母の顔がはたと凍りつく。
2日に1回の買い物帰り。
急に虚空を指して何とやつかぬ顔をする子供は、当時母の目にはどう映ったのだろうか。
「ぁ、あれ、なに」
幼い頃、絵本で見るよりも、テレビアニメで見るよりももっとずっと恐ろしい風体をしたバケモノが、誰かの家の塀に張り付いていた。
震える声で初めて自身の体が震えていることに気付いた、のと恐らく同時だったと思う。
「-------ぅ、…ぁ」
「傑?どうしたの、傑!!」
今思ってもあれは本当に意味が分からなかった。理解が追いつかなかった。重機にでも引かれたみたいな衝撃が頭蓋に走って、それを知覚出来ないまま倒れ伏した。
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