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    エンジェライト

    愛と平和が好き。只今ブレトワ推し。二次創作の小説を書きます。

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    エンジェライト

    ☆quiet follow

    悪夢を見るブレと、その後のトワとの平和な時間のお話です。

    これは私が眠っている時に降りてきたアイディアを元に作ったお話です。


    ブレ→一人称はおれ。トワのことを、リンク、と呼ぶ。十七才。

    トワ→一人称はオレ。ブレのことを、リンク君、と呼ぶ。十六才。性格は温和。

    舞台はトワの方のハイラルです。

    #ブレトワ
    bretwa

    夢の果て無数の矢の雨が飛び交う戦火の中。

    ここはおれの元いた“息吹の”ハイラル。

    魔物達が矢を頻りに放ち、その魔物の数も多勢に無勢で、壊れかけの建物の壁に身を寄せ敵の攻撃を凌ぐので精一杯。

    矢が上からも横からも飛んできて鼻先を掠めた。

    おれの腕の中にはぐったりとしたリンクが、腹部や胸に矢を受けて倒れていた。

    おれも腕や背中に数本の矢を受けたまま、それでも構っていられずに、青白い顔をしたリンクの血糊にまみれた手をひしと握り締めた。

    リンクの傷口を必死で押さえつける。
    だが、矢じりに毒でも塗られていたのか、傷口からはとめどなく血液が溢れた。

    「クソ…ッ!!クソ、クソクソクソ……ッッッ!!!止まれ………!!!止まれったら!!!」

    「………リ…ンク…、くん………」

    もはや虫の息のリンクが、虚ろに虚空を見やりながら呟いた。
    おれは小さなそのリンクの声を、ヒュンヒュンと矢の飛ぶ音の狭間から聞き取ろうと耳を寄せた。

    「……お願いが……ある……」
    「…ッ、なにっ?!」
    握ったリンクの手を引き寄せる。リンクの手には力は殆ど入っていなかった。
    「……君は……、誰か素敵な、人と、……一緒になっ、て……子供を作って………幸せに、なって欲しい…」
    泥で汚れた顔をしておれは目を見開いた。
    「なに……ッ、バカ言ってるんだ!!!おれは…、リンク以外との子供なんて欲しくない!!!」
    「…ぁはは……欲しかった…なぁ……君との子………」
    「リンク…!!しっかりして!!!」
    「、ごめ……もう、目が、見えな、…いんだ…。君の綺麗な顔も……もっと見て、……おきたか……」

    …ガボッ!!!

    その時突然リンクが激しく吐血した。
    量が多く、傷の深さを物語っていた。
    おれは驚愕し、身体中が震えて止まらなかった。

    もはやなにも映さなくなったリンクの青い瞳が静かに閉じられてゆく。
    おれは恐怖に彼の手をちぎれんばかりに握り締め、叫んだ。

    「イヤだリンクッッ!!!イヤだイヤだイヤだイヤだっ!!!!」

    彼の胸の上には血溜まりが出来て、傷口を押さえるおれの手を真っ赤に染めていた。

    そして。


    矢の雨降り荒ぶ中、リンクはおれの膝の上で、静かに事切れる。


    冷たくなってゆく彼の亡骸を抱き締めて、
    おれはいつまでもそこを離れず、
    ただ、無力な赤ん坊のように
    泣き縋った。

    身体のそこここが、泥と血糊にまみれても
    それと共に
    いっそこの彼とひとつになってしまえたらと
    慟哭の果てに思った。








    ―――酷い夢だった。
    こちらのハイラルに来て、向こう側のハイラルでの夢を見るのは本当に久しかった。
    矢の雨も大地も空も血の匂いも
    全てが、妙にリアルで
    実際にリンクを失ったかのような強烈な喪失感が
    夢から目覚めた今も胸にこびりついていた。

    「………クソ………ッッ!!!!」

    ベッドに仰向いて寝た姿勢のまま、布団の端を拳で叩いた。

    胸糞悪い。

    夢だった筈なのに、
    別れ際のリンクの言葉が、
    あまりにもリアルだ。
    まるで彼本人が放った言葉のようだった。

    あんな別れ方。

    死んでもごめんだ。



    ふと、布団の隣を見た。

    そこに、リンクはいなかった。
    ぞっとした。
    まだ夢の色濃い余韻が残る今、彼の不在はあまりにも身にこたえた。

    と、そこに階下から階段を上ってリンクがベッドのところまでやって来るのが見えた。

    酷くほっとした。
    おそらくトイレにでも行っていたのだ。
    たったそれだけだというのに
    おれはこの時怖くてたまらなかった。

    「あ、リンク君、起きた?」

    早朝の陽光が窓辺からさし込む。
    リンクはなにごともない様子でベッドの元に戻って来る。
    おれはたまらず、言った。

    「リンク、ここにおいで。」

    上体を起こし、両腕を広げてリンクの方へ伸ばし、彼を招いた。
    リンクははっとしたように立ち止まる。

    「お願い、抱き締めさせて…」

    懇願すると、リンクは不思議そうにしながらも、その後、
    「…分かった」
    と言って静かにおれの懐に抱かれてくれた。


    腕に確かにいだける彼の存在感。
    花と、リンクのにおいが、鼻腔を抜ける。
    夢に見た血の匂いなど、微塵もしない。
    そのことに安堵し、おれは夢の内容に引っ張られて彼のことが恋しくてたまらず、優しく、けれど窮屈に、彼を抱き締めた。
    おれの様子に、リンクはなんとなくでもなにごとかを悟ってくれたようで、
    ただじっと大人しくおれの腕の中に身を預けていてくれた。

    「リンク…」

    夢の中と違い、確かな熱を宿すリンクの愛しい身体に擦り寄る。

    「愛してる。あなたじゃなきゃダメだ。永遠に、どこにも行かないで」

    朝日の中で、しばらく、おれはそうしてリンクという名の愛を抱き締め続けた。






    「リンク君、髪、結んであげる」

    リンクを充分に抱き締め終えた後、彼は不意に言った。
    寝起きでまだ結われていない、肩に垂れたおれの長い金糸をリンクは愛おしげに指先で掬い、目を細めておれを見つめた。
    その時の、朝日に照らし出された布団の上のリンクの姿が、神々しかった。

    後ろを向いて、リンクに髪を結われる。
    なんだか神聖な儀式みたいで、心が洗われる。
    リンクに結われた髪でいると、なんでも出来てしまいそうな感覚に至る。所謂無敵な気分だ。

    「えへへ…、なんか嬉しい…」

    と、髪をまとめるために、束を指で梳き集めてリンクは言葉を零した。
    「リンク君の髪結んであげるの、ちょっと夢だった。君の髪サラサラだね、綺麗だよ」
    「ふふ、そっか。ありがと。でもやっぱりおれは、リンクの髪の方が好きだな。」
    穏やかな、平和な、幸せな刻。
    頭に触れるリンクの手つきが柔らかくて、起きたばかりだというのになんだかまた眠たくなってきてしまう。
    「…癒やされるなぁ」
    おれが呟くと、リンクは、
    「クスッ、それは良かった」
    と言って控えめに、けれど可愛らしく笑った。

    髪を結い終える。
    その合図に、リンクはベッドの上に膝立ちになっておれの頭頂部にちゅっと音を立ててキスをしてくれた。
    可憐な仕草だった。
    「はい、お疲れ様。…またさせてね」
    「もうリンク…かわいいんだから。うん、またお願いするね」
    リンクが結ってくれた髪。
    すっごい嬉しい。
    今日はスーパーマンだ、おれ。
    「あ、リンク、お返しなにがいい?」
    「え?」
    おれはベッドの上でリンクを振り返った。
    視線の先ではリンクが目を丸くして驚いている。
    「じゃあさ今夜、えっちする?」
    いたずらっぽく出し抜けにそう尋ねると、リンクは、
    「えッ!!…ぇ…っ!!」
    とあからさまに動転していて、相変わらず初なんだからなぁ、とおれは心の中でにやにやした。
    「おっ、お返しなんて、そんな、いいよ。髪を結んだだけなんだし…」
    「えっちしたくない?」
    「……ぅッ…した、したく………、」
    「おれは今日リンクのことめいっぱい愛したい気分だなぁ」
    「も、もぅっっ、リンク君のエッチっ!」
    「にゃはは〜っ、おれも立派なオスですから」


    ねえ

    幸せだねリンク。

    あなたの居るおれの世界は

    もう薔薇色でいっぱいだ。

    おれ達の居るべき場所は

    きっとここ。


    もう二度と

    あんな夢を見なくても済むように


    この今をもっと感じて生きていよう。


    おれとあなたの今ここにあるこの鮮やかな色彩だけを

    ずっと

    ふたり、見つめていきたい

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    エンジェライト

    PASTブレ→一人称はおれ。トワのことを、リンク、と呼ぶ。十七才。

    トワ→一人称はオレ。ブレのことを、リンク君、と呼ぶ。十六才。性格は温和。天気病という病を患っている。


    天気病→湿度や気圧によって身体に影響を受ける病気。身体と同じほど、精神にも揺らぎをきたす病。


    舞台はトワの方のハイラルです。
    花かんむり麗らかな日和。小さな花が咲く樹の下で野原に群生する白い花々が風に揺れる姿を眺めた。
    おれ達が暮らす村の外にあるちょっとした野原に、ピクニックと称してリンクとふたり、やって来ていた。今は平和なこのハイラルでこうしてふたりで過ごすのはおれの夢でもあった。
    籠に入れて持ってきたサンドイッチとリンゴジュースをのんびり飲食しながらのどかな景色を心ゆくまで楽しむ。小鳥がどこかでさえすり、風が草木を撫でる音が耳を癒してゆく。
    陽光はあたたかいが風は少し肌寒く、体調が万全でないリンクは肩にショールをかけて景色を眺めていた。
    「あの花」
    静かにリンクが言った。
    「故郷の森にも咲いてた。なんだか懐かしい」
    おれは口に入れていたサンドイッチの欠片を飲み込んで、手についた屑をパンパンとはたくと、しばしその群生した白い花々を見つめた。
    1807

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