回顧 藍忘機の世界は、雅正集と雲深不知処でできていた。
日々藍啓仁の教えを受け、藍曦臣や門弟達と鍛錬に励み、山で修行する。夜狩のために雲深不知処を出ることがあっても、他人と接触することはない。藍忘機は仙門の務めとして、ただ邪祟を除くだけだ。
藍忘機という人間は雅正集でできていて、人情を解さないのだと言う者がいる。人心を解さずして問霊などできようはずがなく、人から生まれる怨念を祓うことなどできないというのに。
ただ、藍忘機にとっては、周りがどう思おうとも関係なかった。兄は無表情と称される藍忘機の顔から感情を正しく読み取ってくれるし、雲深不知処にいる分には、同じ規則で生活する者しかいないのだから困ることもない。
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