俺が彼と初めて顔を合わせたのは、あの二重ダンジョンでの事件の後だった。入院していた俺の元に、彼が監視課の職員として事情聴取に来た。どこか厳しそうな雰囲気に少しばかりの気まずさと苦手意識を覚えた。落ち着いた声で丁寧に尋ねる彼に俺は気を引き締めて答えていたが、いくつか質問されてあっさりと聴取は終わった。彼は特に俺を深追いすることなく淡々とした態度で礼を言い席を立った。
正直、その時のことは特に記憶に残らなかった。協会の職員なんてたくさんいるし顔を合わせることも頻繁じゃない。けれどしばらく経って協会を訪れた際に、ふと彼を見かけてあの出来事を思い出した。
彼は上司らしい年配の男性と話していた。俺はただ廊下から遠目に見ていただけだったが、ふとした瞬間に彼が柔らかく笑った。病院で会った時の堅い印象が嘘のような表情だった。
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