贋作:カチャ、カチャリ。
穏やかに凪いだ天色の国。その理を守る紡ぎ手の家に、小さな歯車の音が響いている。
ここ数日控えめながらも途切れないそれは、既に生活の一部となっていた。
「っし、これで多分………」
先日まで街中を闊歩していた丸々とした生き物――ペンギンを模した機械を床に置くと、キュイキュイと鳴き声のような音を出しながら辺りを駆け回り始める。
「あーー走り回んな!自走の制御か…?問題ねえと思うんだけどなぁ」
それを作ろうと思ったのは何となくの気まぐれ。
少し大掛かりなものに挑戦してみたくなって、なら近くに見本がたくさんあるものが良いだろうと考えが至っただけのことだった。
……そこに別の理由があったのは否定しないけれど。
街に溢れていたペンギンがいなくなってしまって、天色の海が少し広くなって。
妹分はそこまで変化がないように振る舞っているけれど、わざとらしい笑顔が増えたように思える。
「…本物じゃなくても、思い出を大事にするくらいはいいよな」
こつんと膝にぶつかったペンギンが、こてりと首を傾げた。
職工Lv:1→2
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