天色の町から町をペンギンが埋め尽くす、なんて表向き珍妙で平和な事件からひと月ほど。
カタカタ、カタカタとからくり特有の音を鳴らしながら例の白黒の鳥……に似た機械が道を走っていた。
「っし、自走機構は問題なし。あとは耐久性テストだな」
後ろで青年の声がする。図面に何事かを書きつけるとからくりに駆け寄り、階段に踏み込む前にひょいと抱え上げた。油や煤で汚れた手が塗装にぶかっこうな色を足す。
「あー……塩水で落ちっか?これ。あいつこういうの目敏いし汚れにくいよう加工するか?でも重くしすぎるのはなあ」
汚れに気付いてまず頭をよぎったのは、明るく振る舞うくせ変なところで気を遣う妹分のこと。放っておけなくてつい作ったはいいものの……
533