白銀は陽を浴びて本営の扉を開ける。1人分の荷が少ない。
執務室へ向かう廊下を歩く。更衣室は別にするかと尋ねたら、早くに使わせてくれればいいと答えられた。鍵は閉められたまま、まだ誰か入った様子はない。
執務室に入り、積まれた資料に目を通す。混乱はまだ根強いだろう……警備の人員を増やさなければならないな。
そろそろ来るだろうか。今日の資料と提案を携えて。ザラストロ様の命を受け奔走していたと聞く。労をねぎらわなければならない。褒章を出す口実にもなるだろう。
―――総本山に呼び出されたと伝えられた。今回の事件についてか。長くなるようなら…………
報告書の山を崩して、インクが減り。また新たに書類が積まれて替えの茶が運ばれてくる。
痺れを切らし、それに手を付ける前に総本山へと向かった。
日が暮れても、冷め切った紅茶には誰にも気づかないままだった。
一人分の荷が少ない本営。
開けられた形跡のない更衣室。
呼びつける部下の声が違うこと。
慣れるまでには、まだかかるのだろう。