鼠は猫に捕まった「泥棒猫」
ふと可笑しそうに呟く声がして振り返る。
「あ。振り返るってことは自覚でもあるんですか?」
僕を連れだしたこと、と言う奴の表情は皮肉気だ。それが誰に対するものなのかはわからない。
「手元の鼠が気を引こうとしているんだ。少しくらいは反応してやっても罰は当たらんだろう」
広がるほつれを見下ろしながら嘲笑うように告げる。
「私が盗み出したわけではあるまい。真実に気付いたお前が勝手にやって来たんだろう?それに犯罪者の方から泥棒呼ばわりというのも心外だな」
気まぐれに振り返り、唇を吊り上げる。色の無いそれは薄暮に立つ砂埃のように現実味がないのに確かに目の前にあって、いっそ美しさすら感じられた。
「……相手が犯罪者だったところで、そいつらを殺すためにルールを侵すんなら僕らも立派に同じ穴の狢ですよ」
泥濘の中を這う鼠は夕陽の領域を踏み外し、灰に染まり始める。
りん、と鈴の音が鳴った気がした
「なんて、どっちが先かなんてもうどうでもいいか」
そうして、