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    ストラトセッティング「ひとりぼっちがひとりぼっちに歌を届ける話」

    ##SS
    ##ストラト

    褪せない夢に、私も色を公園をかなり離れて、切らした息もすっかり整ったころ。
    駅に戻る道すがら信号を待っていれば横からすっと鞄が差し出される。
    「……そうだ。これ、荷物」
    こうなるとは考えてもなかったから開きっぱなしのチャック。その中から使い古しのノートが覗いている。伏せたまま放置していることも多いせいか、揺れるたびにぱらぱらとページが無造作にめくれる。
    思わず奪い取るように受け取って胸の中に抱え込もうとして
    「あ」
    その拍子に、鞄の中で不安定になっていたノートが落ちる。砂利の散った歩道の上に広がった。

    「―――!」
    考える前にノートの上に覆いかぶさり、拾う。
    顔がかあっと赤くなるのがわかる。あのときのバカにするような声を思い出して心臓が痛い。
    「……見てないよね」
    「何が」
    ちょっと前までの表情は別人だったのかというくらいにいつも通りの無表情。一瞬胸をなでおろしかけて、また何でもないような顔で爆弾を落としてきた。
    「コード読めないし。歌詞は……まあ。拾うときちらっと見えたけど」
    でも見ようとして見たわけじゃない、だとか何とか素知らぬ顔で続けていたけど、そんなものまともに耳に入らなかった。
    見られた。しかも、せっかく一緒に音楽できたやつに。
    「帰る」
    「なんで。別に駅同じじゃん」
    「寄るとこあるし。一緒に帰ろうみたいな仲でもないでしょ」
    くるりと背を向ける。弾ける場所、また別に探さないと。
    寄るとこあるなんて嘘。ただ、こいつにまで笑われるのはどうしても嫌だった。

    数歩歩いて振り返ったら、あいつは興味をもう無くしたようにスマホを取り出していた。
    「あ、大体できたら聞かせてよ。来月模試あるからその後」
    思わず立ち止まって振り返る。
    「なんで」
    「何が」
    「笑わないの」
    「いや、何で?」
    怪訝そうな顔でスマホをしまってこちらに近づいてくる。
    「いいじゃん別に何やっても。やりたくてやってんでしょ。僕が勉強してんのも……まあ、似たようなもんだし」
    相変わらずわかりづらい表情。でもバカにしてるわけじゃないし、何も気にしてないってわかる。2回セッションしただけなのに、わかるようになってしまった。

    心の何かがふいにほどけた。でもそれを素直に口に出すのは何かしゃくだったから。
    「一緒にすんな」
    「同じだろ」
    少しだけ眉根が寄せられた。でも口の端は笑ってるし、きっと自分も似たような表情をしてるんだろう。

    すこしだけぐずついた空。今日は雨は降らない。
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    🍏🥝🍣現遂🍣🥝🍏

    PAST〈法庶04〉
    【ふたりハミング】
    いま見たら全年齢じゃなくて法庶だなと思った。
    あと、ほせ殿にサラッと高度な事?をさせてる気がする。
    通りすがりに一度聴いただけの曲、その場で覚えて、知らないその後の部分に即興で別パートメロディ作って一緒に歌うって……
    でも、この二人で歌ったら声とか意外と合いそうで妄想が楽しいです。
    徐庶が最初は法正の事が苦手だったって場面設定もあまりやってなかったかも
     「♪♩♬♩♫〜〜……」
     書庫の棚の前に立って資料整理をしていた徐庶は、何となく曲を口ずさんでいた。何日か前に街で耳にした演奏が印象的だったのか、メロディが自然と鼻歌になって出てしまう。沢山あった仕事が片付いてきて、気が抜けていたのかもしれない。
     ふと気配に気付いて横を見ると、いつからか通路側に法正が立っていて徐庶の方をじっと見ていた。外の光で若干逆光になった彼の姿に少したじろぐ。
     この人に鼻歌を歌ってる所なんか見られてしまうなんて……

     徐庶は法正のことが少し苦手だった。
     諸葛亮と彼の反りが合わず空気がギスギスした時は仲裁役になる場面もしばしば、用があって何言か言葉を交わしたこともある。しかしそれ以上はあまり関わりたくないと、苦手意識を持つ男だった。
    1964