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    遥かなるカルディア第2話

    第2話 調査翌朝、雨林のツリーハウスのベットで目を覚ましたセンは、雨林の綺麗な小川で顔を洗い、朝食を食べた。目覚めのカフェインは紅茶。コーヒーは飲めないが紅茶なら飲めるし好きだった。暖かい紅茶はほわほわと白い湯気を出して、センに一時の癒しをくれる。毎日忙しくてもこの紅茶1杯の為に今日も頑張れる。
    支度を済ませ、ホームに行く。今日は捨てられた地に行って調査を始める。捨てられた地なんて特に調べることなんか無いだろうと思うだろうが、結構あったりする。例えば、書庫に続くドアの所にいつも同じ足跡がある。2人、捨て地から書庫へ入り浸っている星の子がいるようだ。今日はその星の子を特定に近づく為の調査だ。

    『捨て地は、カニもエビもいる…用心しないとねぇ…。』

    そう心で呟いて、捨て地の門を潜った。

    -捨てられた地-

    轟々と音を立て嵐の渦の場所まで来てセンはふと、ここであった昔のことを思い出した。
    まだセンが雀だった頃、双子の片割れと手を繋ぎながらこの嵐の中に飛び込みそして、それ以来二度と会えなくなってしまったこと。今じゃ100年前の記憶、100年も会ってないのでは死んだと同じだ。けれども心のどこかでセンは信じていた、
    今でもどこかで双子の片割れが生きている事を。
    沢山友達が出来て、私なんか居なくてもきっと寂しい思いをしていないだろうと。
    そんなことを思っては、少し悲しくなる自分を押し殺して、彼女は嵐の渦の中へと飲み込まれて行った。
    ざくっ
    いつものように柔らかい砂の上に真っ逆さまに落ち、頭を抱えながらゆっくりと立ち上がる。澱んだ水。緑色をした雲に覆われた不気味な空に、ボロボロの廃墟になった建物と、大量のカニと闇の花。この世の闇を詰め込んだようなそんな場所に慣れてしまっている自分がいる。冷たく劈くような風が彼女のやわらかな頬を傷つける。
    砂を滑り降りて、澱んだ湖を超えて建物内に入って最初の暗黒竜を難なくスルーし、4匹の暗黒竜が居るエリアへとやって来た。此処でも、基本的には闇の花なんぞに構っている暇はない。暗黒竜から避けたりカニをひっくり返しながら進むはずだった。カニをひっくり返そうと大鳴きをしようとした時だった。後ろから来たカニに不意を突かれ、転がった先には暗黒竜がいた。目が赤く光り点滅する。足が、動かない。

    「あ〜らら、油断したねぇ…。」

    急に誰かに手をひったくられた。猛スピードで暗黒竜から離れていく。何が何だか分からなくて、混乱していると、ポイっと地面に捨てられた。

    「いてっ」

    「全く、気楽なもんだな。」

    足と頭を労っていると後ろから声がした。聞いたことのあるような声。でも何か違うような。あぁ、考えるのは後だ、今はとりあえず礼を言っておこう。

    「私を助けてくれたのは君かい危ないところをどうもありがとう。だけれどもう少し優しく下ろしてくれ、私も一応女なんでね…。」

    謝りながら少し文句を言ってみた。モヒカンの黄色い羽織のようなケープを身につけた女型の星の子がこちらをキッっと睨みつけながら言った。

    「助けて貰ったくせに文句言うのか?てめぇはよ。」

    「…。」

    ごもっともな意見が返ってきた。それはそうである。が、女の子なら誰だって「女の子扱い」して欲しいものである。

    「ちょっと、置いていかないで下さいまし…。」

    洞窟の入口の方から声が聞こえた。声の主は綺麗な顔立ちの女型の星の子だった。ふわふわの黒いファーの付いた真っ赤なケープに、輪っかのように髪留めでとめてある髪型。黄色いアイラインに、濃い赤の目。今までこんなに綺麗な星の子には出会ったことがない。

    「置いてってねぇよこいつがカニに吹っ飛ばされたあとにエビに見つかったから、助けてやってたんだろうが」
    「あらま!そうだったのですね。バベナちゃんたら優し…」
    「ちょっと待ってくれ。」

    聞き捨てならない言葉を聞いた気がした。

    「なぁ、君、今モヒカン子のことをバベナって呼ばなかったかい」
    「え、えぇ…そこのモヒカンの子はバベナってお名前なので…。あの…どうかなさいましたか?」
    「…そうか、いや、すまなかったね。行方不明になった私の親友と同じ名前してたからさ。」
    「あらまぁ、それは悲しい事です。どんな子だったんですか?」
    「…優しくて、可愛い子だったよ。少し気が弱いのがアレだったけどね。」
    「……あらあら、そうだったのですね。」
    「あはは、こんな事を見ず知らずの人に話すのも変だな、忘れてくれ。」
    「ふふ、大丈夫ですわ、きっとご親友もすぐに見つかりますよ。」
    「…ありがとう、すぐ見つかるといいんだけどね。」
    「えぇ、あ。お名前お聞きしても宜しいですか?私の名前はアイビーです。」
    「アイビーちゃんね、私はセンだよ。」
    「ありがとうございます。それではセンちゃんお気をつけて、捨て地では気を抜いては行けませんよ。後、書庫もね」
    「(書庫も…?)あ、あぁ!忠告感謝する。バベナちゃん、助けてくれてありがとうね。じゃあまたいつか。」

    そう言って飛び立ったセンの姿を見送って洞窟の中に入っていった二人は顔を見合わせ

    「双子なのに、あぁも性格が違うのは何故なのでしょうね。」
    「知らねぇよ。ま、離れ離れになったらそうなんじゃねぇの?」
    「うーん。でもとある離れ離れになった双子のデータでは、性格も変わってはいなかったって出てますよ?」
    「んじゃますます知らねぇな」
    「うふふふ…そうですわね。(あぁ…。もうすぐ、もうすぐです。センちゃん、今は何も知らないでお過ごしなさいな。そう、何も知らないで、ね。)」
    1人でほくそ笑むアイビーにバベナは気味が悪いなと思いつつも、センよりも先に書庫へ帰ったのだった。

    -書庫入口付近-

    書庫の入口付近に無事辿り着いたセンは、じっと足跡を見る。

    「真新しい足跡だ……。さっき書庫に入ってったのか…。」

    顔を見上げれば書庫に繋がる廊下。夜の帳が降りる頃の空のような色をした空間が広がっている。
    やはり今回の事件には、この世界の情報が詰まった書庫が関係しているようだった。恋人が頑張って集めてきてくれた目撃証言。書庫に向かう雀と他の星の子2人。

    「追って見るかねぇ!」

    そう言ってセンは、書庫に入っていった。
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