第6話 偽物「んぅ……。」
センは、優しい花の香りに目を覚ます。目をこしこしと擦って上を向くとラルと目が合った。
「ん、目ェさめたか?おはようさん。」
耳に優しい、少し低めの声で囁かれる。ずっと聞いていたい声だ。
「おはようラルお姉ちゃん」
むぎゅっとラルを抱きしめながらニコニコとひまわりにも負けない笑顔をラルに向けるセンに。ラルも抱き締め返す。
「モヤモヤしたり、苦しくなったりしてないか?」
「してないよ?」
こてんっと首を傾げて目をぱちくりさせているセンを見て、可愛らしくて頭をわしわしと撫でた。
「あら、センちゃん!おはようございます。起きてたのね。」
「あ!アイビーお姉ちゃんバベナお姉ちゃん」
センは、アイビー達を見かけると両手を広げてパタパタと2人に走って近づいた。抱っこしてもらったり、おんぶしてもらったり、頭を撫でてもらったり、ニコニコして甘えているセンを見て、ラルは、アイビーは、ちっちゃい子が好きなのか等と考えていると。
「ラルおねぇちゃん」
足元にぴっとりくっついているセンの声に現実に引き戻された。
「なんだ?どうしたんだ?」
「ん~おなまえよんだだけ」
にへへ~と笑うセンにラルは思った。なるほど、アイビーのちっちゃい子好きはこういうことか。
ラルは少し困ったような顔をしてセンの頭を優しく撫でた。
だけどこれはラルの望んだ未来ではない。
いや、約束したのだから結果はこうなる事は分かっていた。ただラルは会いたかっただけ。センに見つけてもらって、抱きしめてもらいたかっただけだった。100年越しの願いは、このまま偽物の幸せにいつまでもしがみついていていいのだろうか。