LKNの独白 気がつくと目で追っていた。
サバイバーを狩る者ハンターとして、獲物としてではないのだと気づいたのはいつからだったか。ルキノにはもう思い出せない。
鉄製のヘルメットに押し込められたふわふわとした焦げ茶色の癖毛。男にしては白に近い肌に、豊かな睫毛に伏せられた黒曜石のような瞳。火傷で爛れた肌を本人は醜いと言っていたが、ルキノは全くそう思わなかった。美醜はともかく、それが彼を構成する1つの要素であるのなら火傷痕さえも愛しく想ってしまうのだから。
そこでルキノは気がついた。ああ、自分は、彼に、恋をしてしまったのだと。同時に、その恋は絶対に叶うことはないのだとも。
自分に利のない関係はハンターは勿論、仲間であるサバイバーですらも持たない、彼の興味は名声と宝石のみ、それに恋愛対象は女性、なんて。
サバイバーにそれとなく聞いた情報を纏め上げ、出してしまった結論に、ルキノはその時初めて自分の研究熱心さを呪った。
可能性など全くないのだから諦めろと言う理性。
それでも彼と共に在りたいと叫ぶ本能。
普段の自分ならば切り捨ててしまえる感情を、未だに捨てられないのは、何の因果かルキノが人間の姿を取り戻したことも関係していた。
サバイバーとして彼と少ないながらも言葉を交わす度、傷の手当てや救助するために触れる度、ルキノの頭に過るのは"もしかしたら"という小さな可能性。
実際サバイバーたちから聞いた話とは異なり、話せばそれなりに返事が返ってくるし、聞けば食べ物、特に甘味に興味があるらしく、一応は敵である自分を今度是非と食事にも誘ってくれたのだ。ただ確かに彼らの言うとおり、彼は常に顔をぴくりとも動かさない。それでも大好きだというドーナツを頬張った際のほんの少し緩んだ笑顔を見せられてしまえば、更に諦めはつかなくなった。
友人と呼ぶには烏滸がましい、仲間という名の、ほぼ他人に等しい関係性。蜘蛛の糸よりも細く、砂の城より脆いそれは、いつ消えるかも分からないが、それでも0よりはずっとましなはずだ。
小さな可能性を手繰り寄せ、追い縋ったその先にある"もしかしたら"。それを手にする機会を、ルキノは虎視眈々と待っている。