やや薄暗い画面。
輪郭ははっきりしないが、おそらくステージのような形状をしていると推察する。
ステージの中央。
不意に点いたスポットライトの下には一人の少女。
恭しく大仰に畏まった、芝居がかった礼を一つ。
鈴が転がるような声で、明るく、挨拶と視聴の礼からなる定型文を言い終えるとまた小さく礼をしてショーの開演を告げた。
踊るように、軽やかにターンをすると少女に合わせて華やかなドレスが舞う。
くるり。くるり。
楽しげに舞う少女が手拍子を一つ。
合図のようなそれに合わせて、少女の向かって左奥に火柱が立つ。
少女よりも頭2つ分程高いそれからは男の声で絶叫が迸る。
更に連続して少女が指を鳴らすのに合わせて四方から同じような火柱が上がり、不協和音が鳴った。
少女はそれらを恍惚した表情で楽しそうに眺めると、舞台端へと視線を送る。
ステージの左側から運ばれてくる目隠しをされた頭だけを出した髪の長い女。
身体は金庫のような金属製の箱に収められており、自力での脱出は不可能だろうと一目でわかる。
おそらく、怯えているのだろう女は小刻みに震えており重厚な箱がわずかに画面上ですらブレて見える程だ。
慈愛の笑みを浮かべた少女が女に近づき、優しく女の頬に手を添えて目隠しの上に唇を寄せる。
女の金切り声が上がるのを見守る少女の頭上から、華美な装飾が施された舞台映えする傘がふわりと落ちてくる。
受け取った少女がくるりと傘を回し、カメラに向けて細い指を三本立てる。
カウントダウンのように一本ずつゆっくりと折りたたまれ、ゼロになった瞬間、少女が足を鳴らすのと同時に傘を女に向ける。
弾け飛んだ女の首が木っ端微塵に天高く宙に舞い、その一つ一つの破片と髪の毛に炎が灯る。
ゆらゆらと舞台一面を照らす火の粉の中を、傘と一緒に舞いながら踊る様は、炎の明るさが映えるよう照明が抑えられた闇の中でよく似合っていた。
正に、ホタルと呼ぶに相応しい。
今日一番の演出を担った火種に拍手を求め、残った金属の箱と燃え尽きたキャンドルを押して捌けるスタッフと新しい機材を設置するスタッフが慌しく入れ替え作業を行う間、少女は楽しそうに再びくるくると踊り場を繋いでいた。
作業終了の合図を受けた少女はカメラに向かって妖艶な笑みを浮かべ、すぐににっこりとした年相応に見える愛らしい表情に切り替える。
ショーのラストを飾る演目を告げ、邪魔になった傘を舞台下に落とす。
微かに聞こえる呻き声と、少女の後ろにずらりと並べられたまだ火のついていない巨大だがまばらな大きさの蝋燭。
舞台の端から端まで半円を描くように配置されたそれの左端を指差す少女。
指揮者がタクトを振るように、少女が指を振るのに合わせて順番に蝋燭に火が灯る。
全てに火が灯り、舞台が明るく照らされると同時に舞台の上からはらはらと火の粉が舞い落ち、より幻想的な光景へと彩った。
舞台の真ん中で丁寧な礼をする少女の姿を映して映像が途切れた。
(・・・如何でしたか?)
(オレの娘は可愛いなァって)
(映像データにつきましては別料金での対応となりますが)
(じゃあカードで)
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ほたちゃんのお仕事配信。
なんで一緒に見てんの。