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    drasticparadigm

    @drasticparadigm

    様子(さまこ)と申します。
    作品は主にモブリン、ぐだ♂リン、ぐだ♂ポカを投稿中。
    どうぞよろしくお願いいたします!

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    drasticparadigm

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    お題箱に頂戴したお題を元に書かせていただいた映画館デートぐだリンちゃんです!
    特殊な設定ですので、以下の点にご注意ください🙇‍♂️

    ※注意
    ・二人が同棲しているという設定の謎の現パロです
    ・何処までもポジティブな立香くん×ツンデレな蘆屋さん、というタイプのぐだリンちゃんです

    #ぐだリン
    limpidPhosphorus

    本日は映画日和? 鏡の前で、何度も自分の姿を確認する。おかしなところはないか、念入りに。
     何せ今日は、大好きな人とデートをするのだ。あの人はそうは思っていないようだが、格好悪いところを見せるようなことがあってはならない。そうして約束の時間に間に合うぎりぎりまで準備をして、彼は家を出た。

     藤丸立香と蘆屋道満は同棲している。
     これもまた、実際には立香の言い分と考えた方がいいのかもしれない。わけあって廃寺となり、誰も訪れなくなった本堂やその周辺の建物を住まいとしている道満が、やはりわけあって家を失ってしまった立香と偶然出逢った結果、彼を招き入れただけのことだと、間違いなくそう主張するだろう。しかも、親切心ではなく好奇心からの行為である、と。
     それでも、立香にとって現在の状況は、一目惚れした相手と同棲しているのに等しいのだ。だから今日だって気分転換に映画を観ようとデートに誘ったつもりだったのだが、道満が渋々とはいえその提案を承諾してくれた時、どれほど歓喜に打ち震えたことか。
    「蘆屋さん! お待たせ……!」
    「かなり待ちましたぞ」
    「でも待ち合わせの時間までまだあるよ⁉︎」
    「早めに所用が済みましたので、十五分ほど前から拙僧は待っておりました」
    「うう……ごめんなさい」
     やはり支度に時間をかけ過ぎただろうかと内心深く反省する立香を横目に、道満はひどく愉しそうにしている。しかし、落ち込んでなどいられない。今日一番の目的である映画について、立香はそれとなく尋ねてみた。
    「映画、何観る?」
    「拙僧は他人の色恋沙汰など興味がありませぬが」
    「別にそういう映画だけじゃないと思うけど……」
     道満らしい反応と言えばそうなのだが、彼の中では映画=ラブストーリー、という認識なのかと思うと、なんだか可愛らしささえ覚えてしまう。恋は盲目などと言うけれど、道満の一挙手一投足、何もかもに愛おしさを感じて止まないのが今の立香なのだった。
     さて、近場のショッピングモールに併設された映画館へ向かうと、平日の昼下がりという時間帯のせいか、然程混み合ってもいない館内で、現在上映中の作品を前にして立香は忽ち悩み出す。
    「うーん……思ったより観たいタイトルが無い! ねえ蘆屋さんは何が……あれ?」
     隣にいたはずの道満は本当に映画には興味がないのか、早速売店で買い求めたLサイズのポップコーンを抱えて満足そうにしている。
    「もう、蘆屋さんってば! 何処に行ったのか心配になったでしょ!」
    「ンン……拙僧、唯一こちらが楽しみだったもので」
    「蘆屋さん、そんなにお菓子好きだったっけ……?」
    「好きですぞ」
     にっこりと笑う道満があまりにも愛らしいので、もうすっかり満足したような気持ちになってしまう。それはそうと、せっかく二人でここまでやってきたのだ。まずは何か映画を観なくてはと、結局選んだのは特に話題にもなっておらず、作品についての評判を一度も見聞きしたことのない、なんとも地味な恋愛映画だった。
    「ちょうど時間的にも良かったのがこれしかなくて……なんか、ごめん」
    「立香が良いのならそれで構いませぬぞ。拙僧はこちらを味わっておりまする」
     マイナーな作品ということもあってか、シアター内には二人の他に観客はおらず、まさに貸切状態だ。大事なデートの当日に、期せずして二人きりになれるとは、なんという奇跡だろうか。隣で黙々とポップコーンを口に運ぶ道満が、一体何を考えているのかは立香にもわからない。それでも、映画は予想を遥かに超えて感動できたし、クライマックスのシーンで思わず傍らにいる道満の手を握ってしまった時も決して振り払われたりはしなかったし、劇場を出る頃には、立香の心もまたスクリーンの中の主人公のように、幸福で満ち溢れていたのだった。
    「やはり退屈でしたな」
    「そう? オレ、途中でちょっと泣きそうになっちゃった」
     何故泣きそうになったのかと言えば、映画の主人公とヒロインを自分たち二人に重ねたからだと、立香には十分わかっている。様々な苦難を乗り越えた末に結ばれて、幸せを掴み取った彼らのように、自分も道満と──などとうっとりしていたら、道満がふと口を開いた。
    「……申し上げた通り、拙僧は他人の色恋沙汰に対しては微塵も関心を抱けぬのです。まあ、貴方とこうしている方が余程興味深いと、改めて確認できたことには満足しておりますが」
     すっかり空になったポップコーンの容器をゴミ箱へ捨てに行く道満の後ろ姿をぼんやりと眺めていた立香だったが、今まさに彼から聞かされたばかりのその言葉を反芻し、結果的に得られた答えがこれだ。
    「蘆屋さん、オレのこと好き?」
    「……はい?」
    「好きだよね⁉︎ オレも好き‼︎」
    「はあ……?」
     道満は呆れたようにそう言うが、否定は一切しない辺り、立香の出した結論も、強ち間違ってはいないのだろう。
     そう──彼らは、そういう二人なのだ。これまでも、これからも。
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