景儀と阿願と羨羨 ②完わくわくと野菜屑の入った籠を手に進む。
雲深不知処は広く、まだ見たことも行ったこともない場所が沢山ある。
兎がいるという裏山はまだ見えてこない。
丸くて白くてふわふわってどんなだろう。うきうき頭の中で想像を膨らませる。
幼い脚には少し遠いが足取りは軽い。あっという間に目当ての、日がよく当たり草が生い茂るひらけた場所へたどり着いた。
兎はどこだろう。白いのならきっと目立つはず。辺りをキョロキョロと見渡す。
「いた!」
見つけた。木陰に幾つも白い塊がもこもこと集まっている。
微風に草花と兎の毛がそよそよと揺れる様子が気持ちよさそうで、知らず体がうずうずとする。
そぅっと近づいて手前の兎に手を伸ばしてみる。
「おぉ。ふかふか」
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