惑星のそれ 愛というものは人によっては大きかったり深かったりするものらしいと抑揚のない声で唐突に言う。
「おかしいね」
おかしいのは大体いつもあんたの頭の中身だけ。
晴矢は口にしないで応える。それもいつものこと。
愛はひとつの信仰であると風介は続けて言った。大きかったり深かったり、ましてや小さかったり浅かったりするものではないのだと。
何としようがそれは自由で、まったくどうでもいいような話だったけれど、退屈しのぎに訊いてみる。
「じゃあ一体あんたは何を信じてるって?」
「私は私しか信じていないよ」
「へぇ、あんたは自分のことしか愛してねえんだ」
思いがけずに漏れだした拗ねたような口振りが唇を汚した。
訝しげな目に捕まって、後から羞恥が追いかけてくる。今のは確かにおかしかった、けれどやっぱりいつだっておかしいのは風介の頭の中身だから。
「当然だろう、私以外の誰が私が愛してくれるって言うんだ」
風介がそんなことを尤もらしく言ったって、
「オレがいるだろ」
晴矢の正当性も相変わらず、見ている方向は同じなのに隣り合ったところで決して交わらない別の軌道を行く惑星のそれ。
「せめて笑える冗談を言いなよ」
風介は泣きそうな顔で笑った。