ある日オードリーさんから「また新しい商品を仕入れたけどマジで使い道ないからどうにかしてくれ」と呼ばれたパルテティオ。行ってみたらラッパみたいな物を渡されて何ぞこれ、と訊いたら「これは『拡声器』というもので、声を大きくして遠くまで聞こえさせる装置です」と答えるオードリー。「他に何か使い道は?」と訊くも、「いえ、本当にこれだけなんです」と言うオードリーにさすがに頭を抱えるパル。
でもすぐに(あ、店先で客を呼び込む時とかに使えるかもしんねぇな)と気づき、結局買い取った。
それからすぐにソローネの所へ行って、
「ソローネー!面白いモン買ってきたぞー!今いいかー!?」とご機嫌なパルとは反対に、何か思い詰めてるような表情のソローネ。
「ちょうど良かった。私もアンタに話があるの」
「ん?なんだ?」
「私達……、別れよう」
「……そういう冗談は好きじゃねぇぞ」
「本気だよ。やっぱり私にこの世界は合わないし、新聞社のヤツらが色々嗅ぎまわってきて居心地悪いし、しょっちゅう付き纏ってくるしで、いい加減メイワクなんだ」
「……本気か?」
「……あぁ」
「…………」
「じゃあね、パルテティオ」
それからしばらく経ったある日、ソローネはキャスティのところにいた。
「ねぇ、ソローネ。突然やって来るなんて何かあったの?」と、心配そうに尋ねるがソローネは「別に」としか言わない。
「パルテティオと喧嘩でもしたの?」
「……アイツとは別れた」
「ええっ!?」
理由を訊かれ、最初は渋ったが結局全てを話すソローネ。
「……というわけ」
「ソローネはそれでいいの?」
「勿論。それに私とアイツじゃ住む世界も見ているものも違うからね」
「そう……。でも、そんな泣きそうな顔して言っても全然説得力ないわよ?」
「……」
「本当は、アナタの過去がどこかの記者に知られて公表でもされたら、パルテティオに迷惑がかかる……そう思って彼から離れたんでしょう?」
真意を見抜かれて何も言えなくなるソローネ。
(……ここはお母さんの出番かしらね)
それから数日後、ソローネはある港に来ていた。
結局どこに行ってもパルテティオとの思い出で溢れており忘れようとしてもパルを思い出してしまう為、ソリスティアから離れて別の大陸に移ろうとしていた。
そんな時、海の向こうから見慣れた船がやってくる。
船首にはあの拡声器を持ったパルテティオがいた。
「ソローネェェェーーーー!!おま、なに勝手にどっか行こうとしてんだゴラァァァーーー!!!」
思わず「は!?」となるソローネ。
「キャスティから全部聞いたぞーーー!一人で勝手に悩んで勝手に結論出してんじゃねぇーーー!!お前がいることで俺にメーワクかかるとか、ンなわけあるかーーーー!!」
「お前の過去とか俺は心底どうでもいいわ!!!お前はお前だろーーーが!!それでもまだンなくだらねぇこと言うヤツがいたら俺がハリ倒してやっから……だからよぉーーー!!」
「黙って俺についてこいゴラァァァーーー!!!」
そのまま桟橋を走って走って、船に飛び乗るソローネ。
船上で両手を広げて待ってるパルテティオに向かって、
「恥ずかしいんだよ こンの馬鹿!!!!」
思いっきり飛び蹴りくらわす。
所変わって船のブリッジ。
「……ねぇ、パルテティオ」
「んー?」
「さっきの……もう一回言ってよ」
「……しゃーねーな。もう言わねぇからな?ちゃんと聞いとけ」
赤く晴れた顔で改めてプロポーズするのだった。