月の石はきっと、今日みたいな夜を閉じ込めてできているに違いない、とダンデは月影を踏み締めながらぼんやり考えていた。頭上では、さあっと雲のヴェールを取り払ったような空に、煌々とまるく光る月が浮いている。残念ながらその表面にはピッピの姿は見当たらなかったが、代わりに海に落ちた写し身の上でテッポウオがぽちゃんと跳ねた。今夜は特に月が綺麗に見える日らしい、とは昼間に月見の計画を立てていた子どもたちからの情報だ。
それを聞いたから、というわけでもなかったが、ダンデはなんとはなしにふらりと部屋を出て、当て所もなく歩を進めていた。隣には、バディであるムゲンダイナがいる。外皮の奥の内臓部が、うっすら光を滲ませ脈打っている。ずるずる、と長い尾を砂浜の上に引きずる音が、波の合間に響く。
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