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    oboro73672367

    @oboro73672367

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    oboro73672367

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    ゲームクリア時から10年後のお話。
    捏造、独自解釈しかありません。ダンユウですが、ムゲンダイナ→ダンデの表現があります。
    ガラルが滅びます。ローズさんはいなくなります。
    作者としては、他の人はまだ死んでないつもりです。
    ダンデさんと、ザシアンが酷く傷つく表現があります。
    お話の結末は記されておりません。すっきりしない気持ちにさせてしまったなら、ごめんなさい。

    ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



    「ねぇ。おじさん、もうすぐ死ぬわよ。」
     
     とてもよく晴れた日だった。雲一つない、鳥一匹飛ばない晴天の下、年の頃10歳程の少女が一人の男に声をかけた。
     男は崩壊して瓦礫の山となった街の中、辛うじて地面が見える一角で、嘗てはガラルを見渡せた建物の壁だった部分にもたれていた。
     男の死期を悟るのは容易だった。男には右足が無かった。右腕もあり得ない方向に曲がっている。頬には血がこびりつき、臙脂色の服にはよく見るとどす黒い染みが浮き出ていた。
    「ああ。そうだろうな。」
     もう痛みも感じないのだろう。男は穏やかな顔を少女に向けた。
    「死ぬのが怖くないの?」
     少女は心底不思議そうに問いかける。
     男は、今にも死にそうなその男は、満足そうに微笑んだ。
    「怖くはない…ぜ。オレは今日、最愛の女性の命を守ったんだ。…とても満足している。」
     そう言って男は目を閉じた。
     真っ白だった顔色が、土気色に変わっていく。
     少女は男の隣に腰をかけた。男の無事な左手に自分の手を添える。それは氷のように冷たかった。
    「キミは…その服はどうしたんだい?」
     死んだと思っていた男が口を開いた。
     少女は驚きながらも答える。
    「崩れていない服屋さんから持ってきたの。何となく、可愛いなって。あたし、裸だったから。」
     少女はそう言って、嬉しそうにピンクのワンピースを撫ぜ、緑のベレー帽の位置を直した。
     しかしその姿は目を閉じた男には見えない。
    「そうか…キミのその姿、もう一度見たかった。」
     もう開くことのない男の目から、涙が一筋零れた。
    「心残り、あるんじゃない?」
    「そりゃぁ…、あるさ…。もう一度、キミと…。」
     絞り出すように言葉を紡ぐが、それっきり男は言葉を発しなかった。
     男の長い紫色の髪が、風にたなびいて少女の頬を撫ぜる。
     何一つ音のしない無音の世界で、少女は男の隣に暫く座り続けていた。




    ◆◇◆◇◆◇◆◇

     始まりは、10年前にブラックナイトを企てた、ローズ元リーグ委員長が保釈された事だった。
     罪を認め、償ったはずのローズ元委員長だったが、彼は諦めていなかった。自由になると、すぐさま彼は動き出した。

     かつての自分の支援者と巧妙にコンタクトを取り、ローズ氏は水面下で人や金を集め始めた。
     ローズ氏とその計画に賛同する企業は多かった。
     奇しくもエネルギーの枯渇を題材にした本がベストセラーになり、エネルギーへ問題への人々の関心はとても高くなっていた。
     その中で、徐々にローズ氏に救いを求める人々が現れ始めた。最初は目立たなかった彼らの活動は、SNSで拡散され、あっと言う間にガラル中に広がった。
     満を持して、ローズ氏は表舞台に登場する。企業、世論、そしてメディアを味方につけた彼を止める事は、現リーグ委員長、ダンデの力を持ってしても不可能だった。

     何より、ブラックナイトはもう起こらない。ムゲンダイナは捕獲されているのだ。その事実に、人々は安心し、慢心していた。

     そして、ボールに入ったムゲンダイナを用いた、エネルギー実験が執り行われた。
     反対する者は、過去にムゲンダイナと相対した者数名。彼らの抗議は大多数の正義の名のもとに、黙殺された。
     
     ガラルの民は、技術革新による新たな時代の幕開けを予想し、それに酔いしれていた。


     しかし実験は失敗に終わる。
     ムゲンダイナが実験に伴う己の拘束に抗い、暴れ始めたのだ。
     ムゲンダイナは至近距離にいたローズ氏をコアに吸収し、モンスターボールを破壊して暴走を始めた。
     


     一度は防いだはずのブラックナイトが、再び引き起こされた。




     10年前の英雄、ユウリとホップが再び剣と盾を率いてムゲンダイナに立ち向かう。しかし、人間をエネルギー源としたムゲンダイナの力は、以前にも増して強大だった。



     そして。

    「大変だユウリ!ムゲンダイナはダイマックスしたポケモンのエネルギーを吸収しているぞ!」
    「どういうこと、ホップ!?」
    「ガラル粒子がムゲンダイナに収束しているんだ!」


     それは地獄の様な光景だった。
     ガラル中の野生のポケモンが、次々とムゲンダイナの力でダイマックスしていく。ポケモン達は不可解な現象に、恐れ、慄き、暴れまわった。
     人間にはどうする事も出来なかった。建物は崩壊し、森林は焼け、野にはクレーターが出来た。

     しかし、ポケモン達はその体に注ぎ込まれる巨大なエネルギーに耐えられなかった。ダイマックスしたポケモン達は暫くすると、一匹、また一匹と倒れていった。
     倒れたポケモンから、ガラル粒子が抜けていく。抜けたガラル粒子は煌めきを保ったまま、ムゲンダイナに引き寄せられた。
     ガラル粒子が次々とムゲンダイナのコアに吸い込まれていき、その暴力的な力の糧となる。溢れ出した力は渦を巻き、空間さえも歪めた。

     ムゲンダイナと戦っていた、ユウリとホップはひとたまりも無かった。

    「ユウリーーーーー!ホーーーップ!」

     人々の避難を終えて、二人を助けようと、リザードンと共に近づいていたダンデが絶叫する。
     彼は、勇敢にムゲンダイナと戦っていた青年が渦に弾き飛ばされ、女性が渦の中に引きずり込まれるのを見た。
     放物線を描いて飛んでいく青年を、ザマゼンタがすんでのところで捕まえる。ザマゼンタは青年を咥えて、ダンデの所へ着地した。
    「ホップ!しっかりしろ!」
     ダンデが声をかけると、微かにホップは呻いた。
     息のあることに安堵し、ダンデは肩の力を抜く。
    「そうだ!ユウリくんとザシアンは…。」
     空を振り仰ごうとしたダンデの目の前に、どさりと何かが落ちてきた。
    「ザシアン!」
     それは、血に濡れた剣のポケモンだった。ザシアンは立ち上がろうとして、再び倒れる。右足に深く何かの破片が突き刺さっていた。
    「ザシアン!ユウリくんは!?」
     ダンデがザシアンに近寄り、力を込めて破片を抜く。戦いの激しさを物語るように、ザシアンの体は傷だらけだった。
     ザシアンは咥えていた剣をダンデの方へ放り投げる。剣はダンデの足元にからりと落ちた。
    「ウルォーード。」
     そして苦しげに一声鳴くと、ザシアンは力尽きたかのようにその場に蹲った。
     ダンデは剣を拾い上げる。ダンデの手の中で、剣は煌々とした輝きを放ち続けていた。
    「…オレに戦えと言っているのか?」
     ダンデの呟きに、ザシアンは身動きせずに、くるりと尻尾を振った。
    「ウルゥーード。」
     ダンデの後ろでザマゼンタが吠えた。そして、その身を低くする。
    「乗れ…か。確かに、ホップもユウリも戦えないがな。…勝ち目はあるのか?」
     ダンデの問いかけに応える者はいない。ただ、ザマゼンタの尻尾だけが、くるくるとダンデを招く。
    「やるしかないか。」
     久々の前チャンピオンタイムだな。ダンデは自嘲気味に笑った。
    「オマエの背中はオレを地獄へ運ぶのか。…それとも、英雄にするのか。」
     ダンデは右手に剣を握り締め、ザマゼンタに跨った。そして、その背中にしがみつく。
    「…ま、彼女を助ける為なら、地獄の中も本望さ。」
     そう、ダンデが呟くと同時に、ザシアンとザマゼンタが吠えた。

    「ウルゥーード」
    「ウルォーード」
     
     二匹は最後の力を振り絞り、渦の中心、ムゲンダイナへと飛躍する。
     渦はごうごうと唸りをあげ、全てを切り裂く様な鋭い風が吹き荒れる。行き場の無いエネルギーの余波が荒れ狂い、激しいスパークがあちらこちらで飛び交う。
     ザシアンがその身をさらけ出し、スパークを避けながら、渦を切り開いて進んで行く。ダンデの頬に、服に、前から血潮が降り注いだ。
     ダンデの身はどうやらザマゼンタが守ってくれている様だった。しかし、それでも抑えきれない重厚な風圧に、ダンデは顔を伏せた。

     突然、ふっ、と轟音と圧力が消えた。渦を抜けたのだ。

     ダンデが顔を上げると、ザシアンの姿は何処にも無かった。
     代わりに、そこに、とぐろを巻いたムゲンダイナがいた。
    「ムゲンダイマックスは解けていたのか。」
     ザマゼンタはムゲンダイナのコアを目がけて迷わずに駆けていく。ムゲンダイナはぴくりとも動かない。それはまるで、何かを待っているかの様だった。
     ダンデは必死でユウリの姿を探す。そして、その目が見開かれた。
    「な!ユ…くん!」
     ダンデの悲鳴が音にならず零れ落ちていく。
     ムゲンダイナの爪に、ユウリの着ていた上着がズタボロになって引っかかっていた。
     ダンデの目が怒りに染まり、毛が逆だった。剣を握る手に、憎しみの力が宿る。ダンデは揺れるザマゼンタの上で慎重に身を起こし、剣を構えた。

     目前にコアが迫る。ムゲンダイナは動かない。

    「くっそぉぉぉぉぉ!」

     ダンデは赤く輝くムゲンダイナのコアに、ふとうの剣を突き立てた。
     コアの中で、栗色の髪の女性が笑って、ダンデに手を伸ばした…気がした。


     刹那、世界が爆散した。




    ◆◇◆◇◆◇◆◇

     
    「ぐっ…。あっ、がっ…。」
     ダンデはその身を引き裂く様な痛みで目を覚ました。なんとか目を開けて、動かす事の出来ない自分の体を確認する。ぼやける視界の中で、右半身は酷く傷つき、もう動かせない事を理解する。
     左半身に温もりを感じてぎこち無く首を動かすと、そこに全裸の少女がいた。
    「!」
     ダンデは息を飲む。それだけの動作で、肺がきしんで悲鳴を上げた。
     少女はユウリだった。年の頃は10歳前後に幼くなっているが、それは確かに、ユウリだった。
    (護れた…のか…。助けられた…のか…。)
     少女の温もりと、呼吸の動きを感じながら、ダンデはゆっくりと目を閉じた。




    ◆◇◆◇◆◇◆◇


     ダンデは、ぱちっと目を開けた。そして、勢い良く立ち上がる。
    「な!傷が!?」
     ダンデの傷は、まるで最初から存在していなかった様にかき消えていた。どこにも痛みは無い。服もクリーニングしたての様で、汚れ一つ付いていなかった。
     じゃりっと靴が何かを踏んだ。それは、錆びついた金属で出来た何かだった。その形は原型無く壊れていて、元は何であったのか判別出来そうには無い。
     ダンデが思案していると、がらりと瓦礫が崩れる音がした。
    「ユウリくん!」
     ダンデはおぼつかなく瓦礫の上を歩く少女を抱え上げた。そして、そっと平らな地面の上に立たせる。
    「おじさん、目を覚ましたんだ。良かったね。」
     そう言って少女は薄く笑った。
     記憶の中のユウリとは違う笑い方に、ダンデは怪訝な顔をする。自分の傷の事といい、幼く縮んだユウリといい、不可解な事だらけだ。ムゲンダイナは何処に行ったのか。ユウリは何故ダンデの事を知らないかのように、おじさんと呼ぶのか。
    「ユウリくん、オレの事を覚えていないのか?いや、その前に何が起こった?オレの傷が消えているんだ。何かを見ていないか?」
     思わず詰め寄るダンデに、少女はミミッキュの様に首を傾げた。
    「名前を、知りたくて。」
    「ん?名前?ユウリくんのか?」
    「ユウリは、きっと違う。私の、ちゃんとした名前を知りたくて、おじさんの傷を治したの。」
     少女の言葉にダンデは凍りついた。違う。そんなはずはない。心が必死に否定する。しかし、認めざるを得なかった。
     これは、ユウリでは、無い。
    「ムゲン…ダイナ…。」
     ダンデの口から絞り出された掠れた硬い声に、少女は嬉しそうに顔をほころばせる。
    「そう、それそれ。私は、ムゲンダイナ。教えてくれて、ありがとう。」
     少女は嬉しそうに口元に手を当て、くすくす笑った。
     ピンク色のワンピースの袖が下がり、少女の右腕が見える。その腕には濃紺と紅の縞模様がくっきりと浮かび上がっていた。

     ダンデの瞳が絶望に染まり、言葉を無くした唇が微かに力なく震えた。
    (オレは彼女を護れなかったのか…。)
     そこに居たのは、最愛の女性の革を被った、化け物だった。
     ムゲンダイナは名前を得たのがよほど嬉しかったのか、少女の姿でくるくる回り、喜びを表現している。
     少女が回ると、周辺に赤く光る粉のような物がきらきらと舞った。
    「ガラル…粒子…か。」
     少女の口が弧を描く。
    「そうだよ。おじさん、物知りだね。これをあたしがちょいちょいと吸い取ると、そいつは時間を遡るんだ。」
     少女の得意げな説明でダンデは理解した。
    「そうか。キミはオレのガラル粒子を吸って、傷の無い状態へ巻き戻したんだな。」
    「そうそう、正解。大当たりぃ。」
     巻き戻し、いい言葉だね。と、ユウリの顔使ってユウリとは決定的に違う笑みを浮かべる少女に、ダンデは吐き気がしてきた。怒りと嫌悪感がダンデの臓腑を焼く。
    「傷を治してくれて、ありがとう。」
     しかし、この生物に借りを作っておく訳にはいかなかった。ダンデは怒りを押し殺し、傷を治してもらった礼を言う。
     ユウリはくるくる回る所作は止めずに、笑った。
    「ん。気にしないで。おじさんは生きる運命だったんだよ。」
    (運命…。ならば、ガラルは滅ぶ運命だったと言うのか。オマエが滅ぼした癖に!彼女も…ユウリくんも…!)
     ぎり、と噛み締めた口の中で血の味がした。泣きたかった。叫び出したかった。
    (だが、オレにはまだすべき事がある。)
     ダンデはぐいと少女を見据えた。冷静になるように深呼吸をする。
    「なあ、ムゲンダイナ。」
    「ん?なあに?」
     少女は動きを止めて、顔を向ける。無垢な瞳がダンデを映す。それはダンデが好きだったヘーゼルアイではなかった。不気味な赤い目がダンデを捉えた。
    「キミのその巻き戻しの力は、何にでも効力を発揮するのかい?」
    「ええ。何でも戻せるわよ。ちょっと疲れるけど。」
     ムゲンダイナは地面に生えるひしゃげた棒に手をかざした。すると、棒からガラル粒子の赤い粒子が浮き出て、ムゲンダイナの手に吸い込まれる。そして、マジックか何かのように、棒は本来の高時計へと姿を変えた。時計はちくたくと再び時を刻み始める。
     少女はこきりと肩を回した。
    「物体はガラル粒子が少ないから楽よ。生き物はちょっと大変ね。ガラル粒子が多いから。」
    「キミ自身はどうなんだい?ムゲンダイナ?」
    「そりゃ大変よ。ガラル粒子、とっても多いもの。」
    「出来るのか!?」
     さらりと述べられた言葉に、ダンデはギラリと目を輝かせた。
    「出来るわよ。もちろん。」
     喜びを隠さないダンデの反応に、少女は不思議そうに首をひねる。
    「戻してくれ!」
    「ん?」
    「キミを…。10年前の姿に、戻してくれないか。」
     それは一つの賭けだった。目の前の少女の時を戻す。そうすれば。
    (ユウリくんが戻って来るかもしれない。)
     ムゲンダイナはんーと唸りながら、暫く考え込んでいた。
    (頼む、頼む。お願いだ。受け入れてくれ。ユウリくんへ、戻してくれ。)
     平静を装いながら、ダンデは必死に祈った。その時間は、永遠の様に長く感じられた。
    「いいわよ。戻してあげる。」
    「本当か!?」
    「ただし!」
     少女の目が、いたずらっ子の様に瞬いた。少女はすっと間合いを詰め、ダンデに抱きつく。
    「キスをちょうだい。」
    「は!?」
    「あたし、おじさんのこと気に入っちゃったみたい。ねぇ、キスさせてよ。いーじゃん。減るもんでなし。」
     正直、ユウリの姿をしているとはいえ、いや、ユウリの姿を模しているからこそ、この化け物とキスをするなんてごめんだった。
    (だが、これでユウリくんが取り戻せるなら…。)
     ダンデは膝をつき、少女と高さを合わせる。そして、その背に手を回して引き寄せた。
     おぞましい赤い瞳なんて見たくもない。ダンデは目を閉じた。唇に柔らかく何かが触れる。
     ダンデはそれだけで済ませるつもりだった。しかし少女はダンデの顔を両手で掴む。そして、にゅるりとした舌がダンデの口腔に侵入してきた。
    (なっ!やめろ!)
     ダンデは振払おうとするが、ムゲンダイナの力は強かった。ムゲンダイナは思う存分、ダンデを堪能した。ちゅく、ぴちゃ、と音が鳴る。柔らかく、小さい舌はダンデの舌を撫ぜ回し、歯列をなぞる。最後にダンデの舌を小さな口全体で吸い上げると、ようやく少女はダンデを解放した。
    「くっ…。は、はぁ、はぁ、はぁ。」
     呼吸もままならなかったダンデは、少女から距離をとると、膝に手を付き息を整える。そして、ムゲンダイナを睨みつけた。
    「ふふ。ありがと。美味しかったよ。」
     少女が妖艶にぺろりと唇を舐めた。
    「約束だ。戻せ!」
     ダンデが怒鳴る。もう、なりふりを構う余裕も無かった。
    「おーこわ。そだ、おじさんの名前は。」
     教える気はさらさら無かった。その口で、声で、呼ばれる事に耐えられない。そう思った。
    「戻ったら、教えてやるよ。」
     吐き捨てるダンデに、約束よ、と少女は微かに笑った。
     変化は突然だった。
     少女が目を閉じる。すると、その体からガラル粒子が吹き出した。行き場の無いガラル粒子はキラキラと輝きながら、上空へと登っていく。
     少女の体にも変化が起きる。少女は大人の女性へとぐんぐん成長していく。少女に合わせてあった服が限界まで引っ張られ、ボタンが引き千切れそうだ。ダンデが不安になったその時、今度はユウリの姿が、幼い少女を目指して縮んでいく。
    (ユウリくん!頼む。キミであってくれ!)
     ダンデは必死に願った。
    (もし、時を戻してなおこいつがムゲンダイナだったなら…。)

     こいつを、生かしてはおけない。

     ダンデが怒りの炎を燃やした時、ダンデの手に光が集まった。
    (これは!)
     光はダンデの手の中で、剣の形をとる。それは、崩れたはずのふとうの剣だった。
    (ウルォーード!)
     ダンデの頭の中で、ザシアンの遠吠えがこだました。
    (ザシアン、こいつを殺せと言うのか…。)
     ダンデは剣を握りしめる。剣は強く輝き、ダンデに応えた。
     少女の変化は緩やかになって来た。放出されるガラル粒子も少なくなっている。懐かしい姿に、一瞬、ダンデは目を細めた。
     チャリ。音を立てて、ダンデは剣を構え、切っ先をゆっくりと少女へ向ける。
     ガラル粒子の放出が止まった。
    (ユウリくん!ユウリくん!お願いだ、目を開けてくれ!)
     ダンデの心の慟哭は、彼の表には出てこなかった。ただただ冷酷に、剣を構える。
    (どっちだ!どっちなんだ。)
     耳が痛くなるほどの静寂の中、剣の切っ先がぶるぶる震えた。


     そして、ゆっくりと、少女の目が開かれた。
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    oboro73672367

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    捏造、独自解釈しかありません。ダンユウですが、ムゲンダイナ→ダンデの表現があります。
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    作者としては、他の人はまだ死んでないつもりです。
    ダンデさんと、ザシアンが酷く傷つく表現があります。
    お話の結末は記されておりません。すっきりしない気持ちにさせてしまったなら、ごめんなさい。
    ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



    「ねぇ。おじさん、もうすぐ死ぬわよ。」
     
     とてもよく晴れた日だった。雲一つない、鳥一匹飛ばない晴天の下、年の頃10歳程の少女が一人の男に声をかけた。
     男は崩壊して瓦礫の山となった街の中、辛うじて地面が見える一角で、嘗てはガラルを見渡せた建物の壁だった部分にもたれていた。
     男の死期を悟るのは容易だった。男には右足が無かった。右腕もあり得ない方向に曲がっている。頬には血がこびりつき、臙脂色の服にはよく見るとどす黒い染みが浮き出ていた。
    「ああ。そうだろうな。」
     もう痛みも感じないのだろう。男は穏やかな顔を少女に向けた。
    「死ぬのが怖くないの?」
     少女は心底不思議そうに問いかける。
     男は、今にも死にそうなその男は、満足そうに微笑んだ。
    「怖くはない…ぜ。オレは今日、最愛の女性の命を守ったんだ。…とても満足している。」
     そう言って男は目を閉じた。
     真っ白だった顔色が、土気色に変わっていく。
     少女は男の隣に腰をかけた。男の無事な左手に自分の手を添える。それは氷のように冷たかった。
    「キミは…その服はどうしたんだい?」
     死んだと思っていた男が口を開 7607

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