「貴方がいつまで経っても殺してくれないから、私は思い立ったのです。貴方がむしろ殺したくなるようなことをすればいいのだと」
寂雷は眉をひそめた。これは執着だ。それも相当厄介な、粘着という名の執着。
極端な愛情は一種の執念に変わる。彼の捻じ曲がった究極の羨望の眼差しは、もはや自分へ関心を向けられることすら通り越し猛威を振るう異常なまでの破壊行為でしか満たせないのだ。
「そこまで殺してほしいと訴えるのに、私を殺そうとはしないのですか」
「解釈違いです」
「解釈違い?」
「人間はえてして自分より強い生き物に手をかけられたいと思う生き物でしょう?」
「言ってる意味が分からないのですが」
「私は貴方に強くあってほしい。そう、"私より"。
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